其の三
あの子はどこの高校に通う生徒だったんだろう。
少し茶色が混じった長い黒髪に、大人びた目鼻立ちがとても印象的で、細い体型のわりに大きな胸の膨らみも一人前に思えた。
その清楚な制服から生えた長い脚が、とてもいやらしいものを象徴しているようで、自分が気づいた時には彼女と僕の下半身は繋がっていた。
建設途中のマンションの中はコンクリートが体に冷たくて、僕も彼女も手足のあちこちに擦り傷をつくったりしてさ。
女子高生をレイプするという行為が、あんなに興奮するなんて知らなかったよ。
泣きわめく口にショーツを押し込まれ、ブラジャーで両手を縛られた少女の姿、アダルトビデオなんかでは味わうことのできない臨場感。
これが生身の女子高生なのかって、年甲斐もなく息を荒げて武者震いしたよ。
甘酸っぱい匂いっていうのかな、そんな雰囲気がそこらじゅうに充満していて、彼女の割れ目に夢中で舌を這わせてみたり、膣に指を入れて掻き漁ったりするとね、ピンク色の陰唇の奥から愛汁が漏れてくるんだよ。
どんなに幼い顔をしていたって、濡れたり、感じたり、絶頂したりするのさ。
あの女子高生は僕の指で二回、舌で一回、玩具で五回、それから僕の腰突きで三回くらいはオーガズムを覚えていた。
その一部始終はちゃんと動画に撮ってあったから、「これをネットに流出されたくなければ」的な文句を言ってあげたら、その子はとても素直に僕に懐(なつ)いてくれたんだ。
僕は何度も彼女を呼び出して、色んなプレイでサプライズを仕掛けてやった。
ある時、人目につきやすい電話ボックスに彼女一人を置いて、僕は少し離れた場所で『ある事』をしながら彼女の行動を窺っていた。
高校の制服姿のままで小さな箱に閉じ込められた彼女は、誰の目にも、どこにでもいる可愛らしい女子高生にしか見えなかっただろう。
薄着の夏服から露出した若々しい肌は、初夏の日差しを受けても焼かれることなく、溌剌(はつらつ)とした白さを公衆の前に晒していた。
そんな純粋な彼女の体に、僕が不純物を仕掛けておいたのさ。
何食わぬ顔で、電話で話しつづける少女。
そうして僕が手元のスイッチを入れた瞬間、彼女は驚きの変化を見せた。
何かに怯えるように肩をすぼめて、電話ボックスの硝子に寄りかかり、内股に閉じた脚が弱々しく屈折していた。
初めてにしては合格点の反応だったよ。
彼女の電話の相手は僕だった。
だから僕は携帯電話でこう尋ねてみた。
「リモコンバイブで犯される気分はどう?」
すると電話の向こうからは、か細い息遣いが聞こえてきてね、きっと応えられないくらい気持ちいいんだろうなって、僕は確かな手応えを感じていたんだ。
四方を取り囲む視線からは逃れることができない。
そんな状況の中で局部の内側と外側を同時に刺激されているわけだから、性に多感な女子高生ならどんなドラッグよりも魅力的だろうね。
ぐずぐずに濡れた膣はヒートアップして、無理矢理に目覚めさせられたクリトリスは、僕の想像もできないくらいに敏感になっていただろう。
「おねがい……、やめて……」
彼女は何度かそうやって僕に助けを求めてきた。
声が震えて、今にも果てそうな事態が迫っているという少女の気持ちが、痛いくらいに伝わってきた。
だから僕は彼女を楽にしてあげたんだ。
「すぐに済むからね」
それだけ言うと僕はリモコンを操作して、バイブのテンションを強めてやったのさ。
そうしたら彼女、どうなったと思う?
子犬みたいにぷるぷる震えちゃってさ、胸の前で手をぎゅっと結んだまま、腰から崩れ落ちていったんだ。
わあわあ泣いたかと思ったらまたすぐに小さな悲鳴をこぼして、可愛い声でしゃくり上げたり、唾を喉に詰まらせたりして、とても悦んでくれていたよ。
彼女は自分の指でもって、受話器をこつこつと鳴らした。
それが『絶頂』した合図だと決めてあったから、とりあえず僕は満足だった。
道行く人の眼差しを独り占めできて、彼女自身にも得るものがあったに違いない。
僕も通行人の一人になりきって、彼女のそばを通り過ぎざまに様子を窺うと、電話ボックス内の床には、濡れて変色した部分がたくさんあった。
「お漏らししたんだね?」
虚ろな目をした少女を背中に、僕は立ち止まり、そう訊いてみた。
「ごめんなさい……」
電話越しの彼女の声は、涙に水没しているみたいだった。
僕は振り返り、もう一度だけ彼女の全身を姿見してやった。
化粧をしているわけでもないのに、桜の花びらみたいに色づいた唇。
清涼感のある白いセーラーカラーの下で、控えめに膨らむ乳房の揺れ。
丈の短いスカートに隠れた太もものあいだからは、搾りたての果汁がぽたぽたと滴って、ソックスとローファーを濡らしていたんだ。
どうやら僕の躾が足りなかったみたいだ。
一から調教のやり直しだよ。
だけどどうしてだろう、これからという時に僕は飽きてしまって、その女子高生と会うこともやめてしまった。
彼女のほかにも四人の女子高生を次々とレイプしてみたけれど、僕の理想が高すぎるのか、それとも性癖がずれてきていたのか、まるで興奮できないでいる自分が無性に歯痒くなってね。
なんだ、所詮こんなものだったのかって、雲の上に浮遊しているような、つかみどころのない気分に襲われたんだ。
何一つ非のない少女五人分の十字架を背負っているというのに、不思議だね、まるで罪悪感が湧いてこなかった。
あの頃の僕は、ほんとうにどうかしていたよ。
そして家庭を振り返ってみて、やっと気づいたんだ。
僕には家族がいる、愛する妻や娘がいる、混じり気のない血が通(かよ)った系譜がある。
陽のあたるプロムナードをゆったりと歩いていくと、その先には僕を温かく迎えてくれる人がいる。
それが現実だったんだ。
ふとして僕はアルバムを開いてみた。
そこには、彩花がまだ赤ちゃんの頃から高校生になるまでの十七年間の思い出が詰まっていた。
僕はカメラが好きだった。
それ以上に、彩花を撮るのがもっと好きだったんだ。
一人娘の晴れ姿、はじけんばかりの笑顔、照れてはにかむ幼顔、どれもこれも僕の宝物だよ。
それと今日は特別に、とっておきのアルバムを君だけに見せてあげるよ。
どんなアルバムだと思う?
大人っぽい表現をするとしたら、愛と血脈の結晶とでも言おうかな。
そんなに大人っぽくもないか、ごめん、ごめん。
僕がどれくらい君のことを愛しているのか、その証明書のようなものかもしれない。
ごらん、これがそうさ。
一人で着替えをしている彩花、こっちはお風呂に入っている彩花、それからトイレで生理用品を交換している彩花。
次は……もうわかるだろう?
そうだよ、自分で自分の体を慰めている彩花だよ。
小学生の君は、花柄のショーツの上からリコーダーを押し当てて、こんもりとした恥丘のあたりをこねくり回していたね。
中学生の君は、好きな男の子の名前を恥ずかしそうに漏らしながら、オーガズムの感覚を求めて花の蕾をまさぐっていたね。
そうして高校生になった君は、成年になりきれない未成年の体型に指を這わせて、とうとう膣で絶頂することを覚えたんだよね。
何かおかしいかい?
そうさ、ここにある写真のすべては、僕自身が盗撮したものだよ。
人間というのはじつに愚かで、愛に弱くて、理性の壁を簡単に打ち砕いてしまう、本能のままに行動する生き物さ。
*
つづく
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