・・・暗闇
俺はどこにいるんだ?
頭・・いてぇ
「おとうさん!」
目を開けると涙で顔を濡らした結愛がいた
どこ・・病院か?
「・・お父さん、だいじょぶ?」
「結愛・・どうなったか三行で説明してくれ」
結愛はすこし微笑んで俺のほっぺをつまんだ
「そんなこと言えるくらい元気ならダイジョブだね」
「んほぉ・・三行じゃなくていいから説明たのむ」
結愛はうつむいてゆっくり喋りだした
「・・バケモノ・・車で突っ込んできた」
「ばけ・・由利子か!?」
結愛は頷いた
言葉が出ない・・恐ろしくて
「・・・しんじゃった」
「え?」
「バケモノ・・しんだよ・・」
「・・・」
「・・なんか、変な気持ち・・少し悲しい・・でもホッとした」
結愛は俺の胸に顔をうずめた・・
担当の医者から検査の結果を聞かされた
特に異常はなかったが頭を少し打ったのでしばらく入院しておくようにと言われた
結愛は林檎の皮をむいている
冗談のひとつでも言えたらいいがな
由利子・・しんだのか
なんて言ったらいいのか分からない
悲しさと恐怖と怒りが入り交じった感じで・・
「林檎、むけたよ」
「俺の息子の皮もむいてくれ」
「病室が相部屋だったらひっぱたいてた」
「ち、ちち、乳首痛い」
つねりながら結愛は苦笑いする
「笑えないな、なんだか」
「すまん・・」
「お母さんなんて、いらない・・もう」
「結愛・・・」
ガラッ
病室のドアが開いた
歩が息を切らして入ってきた
「結愛ちゃん、怪我は?」
「あ、ダイジョブです、念のためにしばらく入院しますけど・・ね?」
結愛は俺を見た
俺はうなずいた
歩はため息をついてその場にへたりこんだ
「はぁ・・よかった」
「歩、ありがとな」
「ん、よかった・・よかった」
歩にすこし事情を説明した
「・・なんて言ったらいいか」
「歩、何も言わなくていい・・」
「うん ・・・結愛ちゃん」
歩は結愛を抱き締めた
結愛も歩に抱きついた
「怖かったね・・もう安心しなよ」
「はい・・」
「私もなるべくそばにいるよ、なにかあったら遠慮なく言いなよ?」
「・・歩さんみたいなお母さんがよかったな」
「・・はは、私なんかダメだって」
結愛はしばらく歩に抱きついたままだった
・・・この複雑な感情はしばらく消えそうにない
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