しばらく美樹と寄り添っておしゃべりをしていた
美樹は家庭の事も話してくれた
親は共働きでいつも一人だと
俺の場合は片親だが一人で寂しいのは変わらない
なんだか似た者同士なんだな・・って思った
「次の駅で降りるぞ」
「はい・・」
「お前、敬語使うな」
「癖なんです・・あまり友達いないし」
「俺は友達だろ?敬語使うな!いいな?」
「う、うん・・えへ」
美樹の微笑みを見てドキッとした
同時に心細さも和らいだ
見知らぬ駅、見知らぬ町に降り立った
電話ボックスの蛍光灯がチカチカついたり消えたりしている
「よし・・ここで新しい暮らしが始まるんだ」
「ここで暮らすの?」
「お、おうよ!ここでビックになる!」
「びっく?」
「金持ちになるって事!」
小学生の頃は現実も何も見えていなかった
というか・・きっとお袋が迎えに来てくれると期待していた
美樹としばらく歩いて公園のベンチに座った
「美樹、寒くないか?」
「ん?だいじょぶ・・くしゅん」
「寒いんじゃん・・こうしてやる」
抱き締めてやった・・いや、抱き締めたかった
なんだか愛しくて仕方なかった
「あ・・暖かいけど恥ずかしい」
「お、俺だって・・」
おでこをくっ付けた
美樹の熱が伝わる・・
心臓の鼓動が早まる
「な・・美樹」
「ん・・なぁに?」
「俺の・・嫁になれ」
「お、お嫁さんに!?」
「・・・よ、嫁になったら二人で夕飯食えるぞ?」
「う、うん・・そだね」
「・・・前から好きだし」
「え?」
「な、なんでもねぇ!」
長い沈黙の後・・
「うん・・亮太くん・・お嫁さんになるね」
「ん・・う・・む・・う、うん!大切にするからな!」
抱き締める力が強くなる
もっとくっつきたくなる
「み、美樹・・」
「・・・チュッ」
「う、うぁ!」
美樹からキスしてきた
俺はびっくりしてのけぞった
「わ、私・・前から・・好き・・」
「お、俺の方が早い!」
「・・・・もう」
照れたまま二人とも動けなかった
その時ポツポツと雪がふりだした
今度は俺からキスを・・する勇気は無かった
ただ寄り添って寒さをしのぐだけだった
遠い遠い昔の思い出・・
「おとーさん?おきて」
「ん?ハァハァ」
「起きて発情しないで」
「恋とは発情だぞ!」
「下品!」
もう朝か
結愛を抱き締めて頭を撫でた
「なんかいい夢でも見た?」
「まぁ・・な」
見たような見てないような・・ま、いい夢だった
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