昔・・たしか小学六年生の頃に美樹が転校してきた
黒いさらさらの髪に清楚な顔立ちの女の子だった
俺はまだ青臭いガキだった・・一目惚れした
初恋だった・・
「お、おい山本・・」
「ん?なんですか?」
いたずらしてやろうと近づいたができない
オーラが他の女子生徒と違うのだ
なんていうか・・華やか
美樹に小さな箱を手渡した、俺の特性びっくり箱
「こ、これ開けてみ?」
「あ、びっくり箱ですか?」
「なっ!?」
「授業中に作ってましたよね?」
美樹はにこにこ笑いながら箱の蓋を開けた
ぴょっと赤いボールが飛び出てきた
「あは、かわいい♪」
「つ、次はもっとすごいの作るから!」
「はい、待ってます♪」
それからだんだんと仲良くなった
美樹はいつも敬語をつかう
それは仲良くなっても変わる事はなかった
そして・・来年小学校を卒業する年の冬
ある日俺は家を飛び出た
お袋にかまって欲しくてオヤジの遺品の壷を割ってやった
・・叱ってほしかった・・寂しくて・・
お袋にかまってもらいたくて仕方なかった
だがお袋は怒りもせず俺を無視した
俺は財布と鞄をつかんで家を飛び出した
夕方の雪道は薄暗く心細かった
「あれ?亮太くん?」
「ん・・山本?」
「どうしたんですか?暗い顔して・・」
美樹は買い物袋を持っていた
お使いの途中だろうか
「俺、家出する・・たぶん学校にはもう行かない」
「亮太くん・・」
美樹は俺の手をにぎってきた
こんなかわいい子に手を握られてすごくドキドキした・・
「私も付いてく」
「はぁ!?」
「理由は聞かない・・けど一緒に付いてく」
何言ってんだこの子は・・
でもなんだか美樹の瞳を見ているとなぜか親近感が沸いてきた
よし・・
「お、お前は人質だ!いいな?」
「はい、人質で・・いいよ」
二人で手を繋いで駅に向かった
どこに向かうかわからない列車の切符を買って・・ただ逃げたくて・・なるべく遠くに
列車の席に二人で座った
「亮太くん、あんぱん食べますか?」
「ん?なんだよ・・食べていいのかゆ?」
「私の夕飯・・」
「・・俺とおんなじだな」
「えっ?」
「俺も・・いつも一人で食べるんだ・・」
「何も言ってないのになんで分かったの?・・亮太くんも夕飯一人で・・」
「今日は二人だ!食おうぜ」
「・・・うんっ!」
列車の外はだんだん寒く冷たく・・暗く・・
どこに行くのだろうか・・
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