その後、寝室で亮一は複雑な思いにかられていた。妻の死後の、加奈子との暮らしについて
思いを馳せていた。男手一つで一人娘を育てるのは気苦労がいる。経済とか衣食住よりも、
日々女として成長していく娘と過ごす事への戸惑いが多かったのだ。
少し人より言動に拙いところがあるが、加奈子は家事などよく手助けしてくれる。
大人しくて手もかからない。だが困るのは著し過ぎる肉体の発育だ。
かなり早くから胸が膨らみ、小学校の高学年で急に色気のある雰囲気になった。
以前作造に言われたように、加奈子はどこか男を引きつける要素があるので、
亮一も加奈子の服装などには気を配った。肌や体の線が目立たない、ガボッとした服を選んだ。
行儀にもうるさく注意したが、まだ子供で無防備に足を立てたり広げたりするので、
長いスカートやズボンをはかせた。しどけない格好をして、男達が加奈子に好色な目を
向けては困るのだ。加奈子も特に嫌がらず、亮一が選んだ衣服を着ていた。
しかし、時々祖父のもとに行った折に作造に買って貰った、いかにも少女趣味なレースや
フリルのついた衣服を、嬉々として身に付ける娘には何も言えなかった。
何より似合って可愛らしかった。
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