作造の視線の先にあるものに気づいた亮一は、さり気なく加奈子を寝室に抱きかかえて行った。
そして作造の申し入れを丁重に断った。作造も了承しつつ言った。
「麻衣子は亡くなったが、これで縁が切れるでもなし、何かあったら援助もするから。」亮一は礼を言い、これからも加奈子共々宜しくお願いしますと頭を下げた。
帰り際に作造は言った。「亮さん…ああいう子は人一倍きっちり躾をせんと、へたをすると……。」
作造は言いよどんだ。本当は、へたをすると男になぶられる、とか慰めものになると
言いたかったが、さすがに父親の亮一に言うべき言葉ではないと、飲み込んだ。
「へたをすると…何か…」作造が言葉を探していると亮一が「男親だけでどうなるか
分かりませんが、女の子だし、充分気を付けて育てます。」と義父の心を察して言った。
それから月日がたち加奈子は中学二年生になった。その間、年頃の一人娘を男手ひとつで
育てるには戸惑う事も多かったが、加奈子は相変わらず幼げでおっとりして、おとなしい娘だったから
育て易くもあった。そして今では亡き妻以上の美しい娘になっていた。
そんなある日、亮一と加奈子のもとに訪ねて来た者がいた。
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