さざ波の音
磯の匂い・・
海だ・・
「綺麗だね・・」
「おう・・だがな・・」
娘の肩に触れる
娘は俺の顔を見る
「結愛のほうがもっと綺麗だよ」
「む・・・・お父さんって昔はモテた?」
「当たり前だ・・」
「・・・バカ」
娘は顔を赤くして歩き始めた
砂浜に人はいない
季節的にまだ海水浴をする人はいない
「貝殻とかないかな?」
「あぁ、分かった・・」
「ん?」
「結愛は貝殻の水着を着たいから材料集めのために海に来たんだな!んで人魚プレイを・・」
「夏休み前にね、学校で盆踊り大会があるの・・みんなで貝殻のオブジェを作るんだ」
「・・・つっこめよ」
「うるさい、バカ」
軽く無視された・・かわいいから許す
盆踊りか・・つまり
「浴衣姿の結愛を見れるのか」
「うん、そうなるね」
娘は貝殻を拾っている
家から持ってきたレジ袋に次々と入れていく
風が吹くと娘のスカートがなびく
「見ないでよ」
「断る」
「もう・・」
向こうに岩場がある
二人きりになるにはいい場所だ
俺も昔あそこで付き合ってた女と・・
「向こうの岩場をいやらしい目で見てる変態お父さん」
「・・な、なんだ?」
「手・・繋ご・・誰もいないから」
「お、おう」
娘と手を繋いで海辺を歩く
落ち着くな・・癒される
「お父さんはまだお母さんが好きなの?」
「・・・あぁ」
「・・・お母さんはもうお父さんの事嫌いだよ、それでも?」
「愛してるよ・・大切なんだよ」
「・・・おかしいよ」
娘が俺をにらむ
何を言いたいかは分かる
娘は俺に怒ってるんじゃない、妻に怒っているんだ
「お母さん・・最低」
「女はそういう生き物だよ・・その場その場で変わってしまう・・そういう生き物だ」
「私は違うもん!お父さんをずっと大切にする!」
嬉しいが・・親子だ
他人だったら結婚もできたかもしれないが
「結愛、俺よりいい人が現れたら迷わず俺を捨てて・・」
「ばかっ!お父さんのばか!私はお父さんを捨てたりしない!絶対にそんな事しない!」
娘は俺に抱きつく
「どうしてそんなに悩むの?親子で恋人になったっていいじゃん」
「結愛・・」
「親子って無償の愛で繋がってるんだよ、他にはない愛で・・」
娘の涙目が夕日で輝く
綺麗な目で俺を見る
「分かったよ・・ごめんな」
「お父さんが私を捨てないか心配だよ」
「捨てたりしないよ」
頭を撫でてやる
娘は岩場を指差した
「あっち・・行こ」
「おい、結愛?」
「誰もいない・・二人きりだよ」
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