テレビは深夜番組がやっている
若い女の子たちが恋愛について語っている
俺はサラミを食べてビールを飲み干す
稼ぎはいいが安いビールを買っている
家庭のためだ
「最近の子は恋愛経験豊富なんだな、しっかりしてる」
「しっかり?ないない、あの女優は影で二股してるって聞いたよ」
娘はまだ私の腕にくっついている
まるで小学生だな
「二股か・・いい女、いい男は三股も四股もするぞ」
「嘘だぁ・・いい女もいい男も一途なんだよ」
「結愛は分かってないな、そもそもいい女ってのはな・・・」
娘がジト目で俺をにらむ
非常にかわいいのだが本気で怒っているようだ
「お父さん、考え方不純!いい女もいい男も一途だよ!」
「男は不純なもんさ」
「私が浄化してあげる!」
「無理だよ、どす黒く濁ってるからな・・いててて!」
娘が俺のほっぺたをつねる
「もう寝る!おやすみ、どす黒い不純なお父さん!」
娘がスタスタと居間から出ていった
「おやすみ、結愛・・いてて、あざになってるかな」
頬を押さえながら最後にチーズを一口
風呂に入って寝るか
脱衣所で服を脱ぐ
私のあれは・・まぁ、なかなか立派だ
最近は妻とはだいぶしていない
ムラムラはするが我慢せねば
浮気しようと思えばできるが・・絶対にしてはいけない
シャワーを浴びていると脱衣所の扉が開いた音
妻かな・・
歯を磨いているようだ
風呂場と脱衣所の間には曇りガラスの扉
薄い薄い扉
その扉を俺はじっと見つめる
「由利子、愛してる」
俺は言った
妻の名前を・・
愛する妻の名前を・・
返事は帰ってこない
歯磨きを終えた妻はさっさと脱衣所から出ていった
聞こえないはずがない
こんな薄い窓ガラスに遮られるほど夫婦の愛情は薄くなってしまったのか
風呂から上がりまた居間のソファーに座る
なんだか寝室に入るのが怖い
ソファーで寝ようか・・
ギュッ
いきなり後ろから抱きつかれた
耳元に吐息が当たる
「お父さんは一途だしいい男だよ」
「結愛?」
「はい、毛布と枕・・おやすみ、お父さん」
娘に枕と毛布を渡された
結愛は微笑んで居間から出ていった
夫婦が不仲なのは娘も分かっているのだろう
察してくれたのか・・
耳に吐息が当たった時・・ドキッとしてしまった
いかんいかん・・早く寝てしまおう
俺は父親
家庭を守らなければ・・
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