いつものように帰宅する
娘は今日も学校の行事の準備があるらしい
毎日迎えに来てもらうのは申し訳ないから自分で帰ると言っていた
居間に入ると妻がいた
いつものようにごみを見るような目で俺を見る
「ただいま」
「・・・今から友達と出掛けてくるから」
男か?と言いそうになった
浮気を問い詰める事もできるが・・
もうどうでもよくなってきている
浮気したいならしてもいい・・俺だって娘と浮気してる・・どっちもどっちだ
妻はすたすたと俺の横を通りすぎた
「いってらっしゃい、気を付けてな」
妻は何も言わずに出ていった
エンジンの音がして遠くに消えていった
俺はソファに座る
寂しい・・一人でいるのが恐ろしい
もし娘に捨てられたら・・俺はこのまま老いて死んでいくだけ・・
そんなのは嫌だ・・
「お父さん、ただいま!」
「お、おう・・おかえり」
娘は俺の顔を見て首をかしげた
「また・・落ち込んでる?」
「落ち込んでなんかないよ」
「そっか・・よしよし」
娘が頭をナデナデしてきた
不安な顔をみせるわけにはいかないな
「お父さん、夕飯食べた?」
「お父さんは夕飯食べない派だよ」
「そんなんダメだよ!ちゃんと食べないと!」
俺は娘の頬に手を触れた
昔使った女を落とす目を使う
「俺は結愛を食べたいな」
「んっ!?」
娘はそっぽを向いて手を払い除けた
真っ赤な顔で俺をじっと見ている
「バカ・・ご飯食べなよ」
「だから結愛を食べ・・」
「変態っ!バカ!」
台所に逃げて行った
俺もまだまだイケるかも?
イケイケ中高年か・・
俺はテレビをつけて戸棚から煎餅をとりだした
テーブルに煎餅を置いた
「まだ照れてんのかな?」
台所に行ってみた
娘が何か作っている
後ろから抱きついて覗きこむ
「ひっ!?」
「何作ってるんだ?」
「は、ハンバーグ・・」
「そうかそうか・・愛情たっぷりの?」
「こ、込めない・・」
「照れてる?」
「て、照れてない!あっち行ってて!」
照れてるな・・
頭をナデナデすると娘はまたハンバーグをこね始めた
「お父さん・・」
「ん?」
「私はお父さんとずっと一緒にいるからね?だから寂しがらないでね?」
「・・・ありがとう、でも先の事を考えるのはやめよう・・親子でこんな関係は普通ありえないんだから」
「でも・・」
「お父さんは大丈夫だよ」
「う・・」
娘はまたハンバーグをこねはじめた
愛は冷める・・ずっと一緒にいられるかは分からない
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