義母の体内に、自分の身体の中に堆積していた液状のもの全てを
を放出しきった、心地のいい疲労感に包まれて、僕は深い惰眠の中
にいたようです。
夢は起きがけの時に見るのを覚えているといいますが、僕も夢を
見ていました。
場面はどういうわけでか、義母がよく通う集会所の駐車場で、停
めた車の中で、僕が誰かを待っていました。
場所柄からいってその相手は多分、義母だと思っていたら違いま
した。
見慣れた色のジャージーの上下姿の由美が、肩に大きなバッグを
背負って、僕のほうに向かって歩いてくるのが見えました。
それがどういうシチュエーションなのかはわかりませんでしたが、
妻の由美は僕のほうに明るい笑顔で手を振って歩いてきていました。
その由美の後方で、義母がこれまでに見たこともないような、怨
めしげな目をして、誰かと並んで立ち竦んでいました。
義母の細い肩に手を添えるようにして、寂しそうな視線を向けて
いるのは、看護師の制服姿の加奈子でした。
夢だからのことですが、状況がまるで呑み込めず、車の中で氷のよ
うに固まってしまっている僕の耳に、三人の女性が同時に、
「浩二さん…」
と呼びかけているのが聞こえました。
僕の名を呼ぶ声は何度も続き、その内、輪唱のように其々の声が声
が個別に僕の耳に飛び込んできていました。
何か良からぬことが勃発しそうな嫌な予兆に駆られ、僕は身体だけ
でなく、心臓まで凍りついた気持ちになっていました。
三人の女性が僕の名を呼ぶ声はいつまでも続き、僕は重い息苦しさ
に襲われ、思わず目を開けると、彼女たち三人の声は、聞き覚えのあ
るメロディに変わっていました。
義母の机に置いたままにしていた、僕の携帯の着信音でした。
まだ虚ろな気持ちの半分は悪夢の中にいた僕は、布団から起き上が
り周囲を見渡した後、這うようにして携帯を手に取りました。
その頭の隅で、僕との激しい抱擁で意識を失くしていたはずの義母
の姿が、布団にも室にも義母がいないことに気づきました。
携帯の画面を開くと、発信者が非通知設定になっていました。
あまり深く考えないまま、僕は着信ボタンを押して相手の声を待ち
ました。
「…あの、もしもし?」
と少し不安げな声で、相手のほうから問いかけてきました。
女性の声でした。
由美でも加奈子でもなく、勿論義母でもあるはずのない、誰なのか
すぐには思い浮かばない、記憶にない声でした。
「もしもし…」
僕が声を発して、自分から名をいって、どちら様で?と確認した時、
僕の頭で何かが閃きました。
同時に悪夢のことはすっかり頭から消滅していました。
「あ、あの…私、上本佐知子です。すみません、お休みの日に突然、
お電話差し上げて…」
相手の名前を聞いて、僕はすぐに記憶を呼び起こしていました。
閃いた相手の名前がそうでした…。
続く
(筆者付記)
中途半端な短文で終わりましたことを、最初にお詫び申し上げます。
実際はこの後も長く書いたのですが、前にも一度あった、禁止ワー
ドとかに抵触してしまい、投稿ができなくなってしまっていました。
四人目の女性について書いたのですが、どれだけ書き直しても禁止ワ
ードに触れるので、中途半端ですが取り敢えずの投稿とさせていただ
きました。
再度、構成中ですので、もうしばらくのお時間をいただきたいと思い
ますので、どうかご容赦願います。
筆者 浩二
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