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近親相姦 官能小説

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投稿者:コウジ
「加奈子、ごめんね…」
 布団の上に力なく仰向けになりながら、加奈子の心ひそかな期待を裏
切るような、僕自身のあっけない暴発を詫びると、
 「ううん、いいの。あなたとこうしていれるだけで、私、幸せだから
…」
 と彼女は白い歯を見せながらいって、僕の側ににじり寄ってきていま
した。
 僕自身の目論見はこの布団の上で、もう一度も加奈子の若い身体をゆ
っくりと時間をかけて堪能するつもりでいたのですが、彼女の祖母が実
の息子に蹂躙される情景を、あまりに生々しく思い浮かべて過ぎてしま
ったからなのか、唐突に頭の中を過ぎった義母の亜紀子の赤い口紅の映
える愁いの顔のせいなのかはわかりませんが、男として不覚な暴発は間
違いのない事実でした。
 すっかり身体も心も萎えた気分に陥ってしまっていた僕を気遣うよう
に、それからしばらくは加奈子も多くを語ろうとはしてきませんでした。
 妻の由美と結婚してからずっと僕の心の中だけの密かな憧憬だった義
母を、予期していなかった出来事からとはいえ、初めて抱いた去年の十
月から、自分の気持ちと周囲が何か激変しているような実感は、僕自身
も薄々とは承知していました。
 義母とのなさぬ関係も、あの日一度だけの過ちということでは済まず、
今はもう底のない沼に滑り込んだような深い関係になってしまっていま
す。
 そしてふとしたきっかけで知り合った、若い看護師の加奈子。
 その加奈子のことすらにも、僕はきっぱりとした思いを断ち切れない
で、こうして遠い北国まで会いに来てしまっているのです。
 萎えた心の中に、これまでの自分の優柔不断さと不甲斐のなさが次か
ら次へと錯綜してきていて、枕の上に沈みきった顔を落としていた僕に、
 「後悔してるの…?」
 と加奈子が酒の酔いも覚めかけた顔に、不安げな表情を浮かべて窺い
聞いてきました。
 「えっ?…あ、ああ、いやそんなことないよ。ちょっと考え事してた
だけさ」
 「何を考えてたの?」 
 「う、うん。加奈子のことさ…」
 「私の…?」
 「僕みたいな中途半端な男と出会った加奈子が、何か可哀想に思えて
…」
 「あなたに最初にアプローチしたのは、私のほうだから。…逆に私の
ほうがあなたに迷惑かけてるのかも…?」
 僕のつまらない落胆が、加奈子の気持ちまで沈みこませてしまってい
ることに気づき、俯せの姿勢から横向きになり、彼女の顔を覗き込むよ
うにして、
 「加奈子、君のことが好きだよ」
 と僕なりの精一杯の笑顔で声をかけてやると、加奈子の愛らしい目か
ら見る見るうちに大粒の涙が溢れ出てきていました。
 加奈子はそのまま顔を僕の胸に伏せてきて、喉の奥を引きつらせるよ
うな嗚咽を洩らし続けていました。
 そんな加奈子に次の言葉が思い浮かばなかった僕は、彼女の肩にそっ
と手を添え当てることしかできませんでした。
 「私…祖母の家を出ます」
 僕の胸に顔を埋めたまま、加奈子が唐突にいってきたのは、それから
間もなくしてのことでした。
 言葉を返そうとした僕よりも先に、
 「就職してるなんて、嘘なんです。…私、またあなたのいるあの街に
戻ります」
 と加奈子は続けていってきたのです。
 「そうなんだ…」
 と僕は何故か具にもつかない返答しかできませんでした。
 祖母の家を出るといった加奈子の言葉は、狂気のような叔父の存在か
らしても当然の選択でした。
 そのことには僕も賛成でした。
 都会の汚れた泥を被り、辛い苦しみから逃げ、唯一血縁的に頼れるは
ずだった遠い北国の、祖母の家に入った加奈子でした。
 少女の頃にも義理の父親から、恥ずかしい陵辱を受け続けた加奈子に、
あろうことかまたしても、叔父という血縁者の魔の手にかかり、少女の
頃と似たような屈辱を受けた彼女の哀し過ぎる数奇な運命に、ただ身勝
手で浅薄なだけの僕からかけてやれる言葉は何一つありませんでした。
 「昨日ね…前に勤めていた、そう、洋二さんと初めて会った病院の院
長先生に、恥ずかしかったんだけど電話してみたんです。…もう一度雇
ってもらえませんか?って」
 「そう…」
 「そしたら院長先生から、いつからでもいいから来なさいって…」
 「そう、よかったじゃないか…」
 そう返答しながら、身勝手な僕の心の中のどこかで、かすかな不安め
いた思いが湧き出ていました。
 この遠い北国の街で、都会の汚れた泥を落とし、新たに再起している
加奈子を、僕は心の中で期待し、ひたすら願っていました。
 それがまた加奈子が同じ街に戻ってくる…何か不穏な予兆めいたもの
を、僕は心密かに感じていました。
 加奈子がまた自分と同じ街に戻ってきたら、否が応でも何らかのコン
タクトはとらざるを得ないのは火を見るより明らかでした。
 無論、加奈子のほうから僕の生活に支障をきたすようなことはしてこ
ないのはわかっていました。
 テレビドラマによくあるような、愛人が相手の家庭まで入り込んでく
るというような、加奈子はそんな女性ではないということは、僕も確信
が持てました。
 それでも同じ街の空気を吸っていれば、男と女の仲なら何かが起こり
得るという可能性が少なくはないという不穏な予兆を、哀しい保身的な
僕は感じていたのです。
 しかしそんな僕の複雑な思いは、加奈子の前には億尾にも出さず、
 「…で、その叔父さんって、それからも加奈子を?」
 と急に話題をあらぬ方向へと転換していました。
 いった後すぐに、聞かなくていいことを、と僕は思わず臍を噛み後悔
しましたが、加奈子はほんの少しの躊躇いを見せた後、
 「…それから一週間ほどして、また叔父が祖母のところにやってきた
の…」
 と酒の酔いも覚めかけた顔をまた少し赤らめながら、かすかに苦しげ
な口調で訥々と話し出してきたのです。
 あの不幸な出来事があった夜、叔父が帰っていった後で、祖母は声を
出して泣きながら、加奈子に幾度も頭を下げ深く詫びたそうです。
 祖母と叔父の身体の関係は、もう二年ほども前から続いているとのこ
とでした。
 そういえば加奈子が祖母に何年ぶりかに連絡をして、しばらく住まわ
せてほしいと頼んだ時、祖母のほうからは快諾的な返答がなかったのだ
そうです。
 祖母の話によると、元はといえば、祖母と叔父の、つまりは母と息子
のなさぬ関係は、もう何十年も前の、叔父がまだ高校三年の時に、そう
いう関係に陥ったことがあるということのようでした。
 たまたま二人で出かけた畑の小屋の中でいきなり襲われ、犯されてし
まったのだと、祖母は加奈子に告白したのだそうです。
 その頃の叔父は今でいう引きこもりみたいになっていて、不登校も長
く続いていたそうで、夏休みのある日、そんな息子の気晴らしにと母で
ある祖母が畑仕事に誘ったのが、過ちの発端だったらしいです。
 畑仕事の最中に祖母のほうが急に気分を悪くし、その後ひどい眩暈に
襲われ、意識を失くしたそうです。
 祖母は背丈はあったのですが華奢な体型で、若い頃から貧血症気味だ
ったということです。
 そして気づいた時には薄暗い農機具小屋の中で、板間の茣蓙の上に寝
かされていて、すでに剥き出しにされていた下腹部に、息子からのつら
ぬきを受けていたということのようです。
 その頃の祖母の年齢は四十二、三歳だったようですが、貧血気味でま
だ朦朧とした意識では、そのことに気づいても強い抵抗もできず、目を
異様に血走らせた若い息子の圧力の前に屈してしまったというのです。
 母と息子のなさぬ関係は、それから半年以上も当時の家族の誰にも知
られることなく続いたようですが、息子のほうが就職で都会に出たこと
で、一応の終止符がうたれたとのことのようでした。
 それから三十年の歳月が過ぎて、母と息子はまた何かのきっかけで、
身体を交える関係に陥ってしまったと、祖母は孫娘の加奈子に赤裸々に
告白したそうです。
 加奈子にしてみれば、聞きたくもなかった出来事で、知りたくもなか
った事実だったのは想像に難くないことだったろうにと、僕は彼女の苦
渋の心情を思いやっていました。
 同時に僕は、つくづくと加奈子の誰にも話すことのできない血族相姦
にかかる哀しい数奇な運命に思いを巡らせ、そんな彼女にかける言葉の
一つすら探せずにいました。
 祖母も含めた叔父と加奈子のその後を、軽々に問い質してしまったこ
とに、僕はまた悔恨の思いを深くしたのでした。
 それでも何故か加奈子は、僕の下劣な問いかけにどうにか応えようと
してか、訥々とした抑揚のない口調で、祖母を含めた叔父との卑猥極ま
りない顛末をかなり具体的に話してきました。
 天井に茫漠とした視線を向けながら、加奈子が話した驚愕の内容を僕
なりに咀嚼し多少の脚色も加えて書き記すと以下の通りです。
 
 その日の夕食を祖母とひっそりと終え、洗い物を済ませた加奈子が自
分の室に戻って間もなく、玄関の戸の開く音がして、叔父が祖母の名を
何度も呼びつける濁み声が耳に入ってきた。
 本能的に加奈子は身の危険と恐怖を感じ、このまま家の外に飛び出そ
うと思ったが、叔父の下卑た濁声を聞き、何故か身体が金縛りにでもあ
ったかのように動けなくなってしまっていた。
 加奈子のいる室と祖母の室は襖戸だけの仕切りで、祖母と叔父の、い
や母と息子のいい争うようなやり取りが、耳を両手で塞いでいてもはっ
きりと聞こえてきていた。
 「や、やめんねっ、洋二。ほんとにいい加減にせんと、母さんにも覚
悟あるよ」
 「ふふん、どんな覚悟な?」
 「里子さんに、あんたの嫁に正直に話するっ」
 「ああ、したらええが。自分の息子の恥と七十過ぎた親の恥を世間に
晒せるんけ?」
 「ああっ…だ、だめいうとるんに。…わ、私はそいでももうええよ」
 祖母と叔父の喧嘩じみた会話と同時に、二人が取っ組み合い揉み合っ
ているような物音が途切れることなく続いた。
 洩れ聞こえる二人の声と、身体と身体が揉み合っているような気配か
ら、祖母が叔父に襲われているのが加奈子にも窺い知れた。
 やがてあるところから、絶え間なく聞こえていた声と物音がパタリと
止み、不気味な沈黙が続いたかと思うと、
 「ああっ…だ、だめっ」
 という祖母の甲高い声が、突然加奈子の耳に入ってきた。
 引き続くように、
 「ああっ…ゆ、許して…よ、洋二さん」
 という祖母の、それまでの居丈高な声質とはまるで違う女々とした声が
加奈子の耳に突き刺さるように聞こえてきた。
 最初の時の声とは明らかに違う祖母の声だった。
 「ああっ…よ、洋二さん…そ、そんなことされると私…」
 「うん?そんなことされるとどうやって?」
 叔父が祖母の身体のどこかの部分を淫靡に責め立てているのが、加奈子
にもわかった。
 「はっきりいわんか、洋子」
 「ああ…は、はい…お、おまんこを舐められると…私…おかしくなる」
 「このくされおまんこか?」
 母と息子の聞くに堪えない下卑た言葉のやり取りに、加奈子は室の隅で
全身を丸く屈め、両手で耳をさらに強く塞ぎ込むしかなかった。
 狡猾な叔父は加奈子が隣室にいることを承知していて、祖母に恥ずかし
い言葉を吐かせているのだった。
 このまま思いきって立ち上がり、一目散に室を飛び出そうと、加奈子は
心の中で何度も思った。
 このまま何もせずにいたら、きっと叔父の毒牙は自分にまで突き刺さっ
てくるのはわかりきっていた。
 それでも何故か加奈子は、結果的には動けずにいた。
 自らの意思とは関わりなしに、一週間ほど前に叔父に強引に抱かれつら
ぬかれた時の記憶が、加奈子の頭の中を勝手に錯綜しきっていた。
 祖母と同じで強く拒んだはずの叔父の背中に、加奈子は最後の時は爪を
立ててしがみついてしまっていた。
 加奈子が室から逃げ出すこともできず、動くこともできずにいたのは、
意思とは裏腹に、女としての身体のどこかの部分が、狡猾で下劣極まりな
い叔父を許諾しているということを、哀しいことに彼女自身が気づいてい
ないのだった。
 「加奈子、いつまでもそったらとこにおらんと、早うこっちさこい」
 怖れていた叔父の濁み声が、加奈子の耳に突き刺さってきた。
 ビクンと全身を震わせ声を出すこともできずにいた加奈子だったが、
 「早うこんかっ」
 という叔父の一喝するような再度の濁み声に誘発されるように、加奈子
はその場にすっくと立ち上がっていた。
 そしてまるで催眠術にでもかかった夢遊病者のように、加奈子は襖戸の
ほうにゆっくりと歩を進めた。
 自分の手で加奈子は襖戸を静かに開けた。
 真正面の布団の上に祖母と叔父がいた。
 祖母は剥き出しにされた下半身を突き上げるようにして四つん這いにさ
れていた。
 下半身を剥き出しにした叔父が祖母の背後で膝立ちをしていた。
 祖母と叔父の身体が密着しているのがわかった。
 「ああ…か、加奈子…ご、ごめんね」
 四つん這いにされ背後から叔父のゆっくりとしたつらぬきを受けている
祖母の声が聞こえた。
 「加奈子、もっとこっちさ来て、服脱げや」
 祖母をつらぬきながら叔父が加奈子を手招きしながらいった。
 「ああっ…よ、洋二さん…お願い…加奈子だけは」
 長い髪を乱した祖母が切なげに顔を左右に揺らせながら、背後にいる叔
父に哀願の声を搾り出していた。
 無言のまま加奈子は叔父の手の届くところまで近づき、自らの手で衣服
を脱いでいった。
 「そこにお前も這え」
 全裸になった加奈子に満足げな表情を浮かべて、叔父は指図してきた。
 祖母と並ぶようにして加奈子は四つん這いになった。
 叔父の手の太い指がすぐに加奈子の下腹部に這ってきた。
 「ああっ…」
 と加奈子は頤を仰け反らせるようにして喘いだ。
 「加奈子、もうしっかりと濡れてんぞ」
 「ああっ…」
 加奈子自身もそのことはすでに自覚していた。
 「やっぱり祖母ちゃんの孫だやな。スケベなまんこしとる」
 叔父の太い指は加奈子の下腹部の裂け目の中に深く潜ってきていた。
 「加奈子、祖母ちゃんのしょぼくれたおっぱいさ、揉んでやれ」
 叔父が加奈子に命じた。
 真横にいる祖母の乳房のあたりに加奈子はいわれた通り手を伸ばした。
 下着の上から加奈子は祖母の乳房の膨らみを掴み取った。
 「ああ…か、加奈子」
 祖母が切なげに喘いだ。
 「気持ちええんか?洋子」
 「ああっ…は、はい」
 「加奈子も早う、儂のものが欲しいか?」
 と叔父に聞かれて、
 「ああっ…は、はい。欲しいです」
 と加奈子は正直な気持ちを伝えた。
 叔父がこの家の玄関の戸を開けて入ってきた時から、もしかすると加奈
子は、自身が気づいていないだけで彼女の身体はこうなることを待ち望ん
でいたのかも知れなかった。
 加奈子の心の中に叔父に対する嫌悪感は強く今もある。
 実の母親を奴隷のように蹂躙し、そして自分までも汚された叔父を憎い
と思わないはずはなかった。
 そんな叔父に結果として従順になり、犯されたいと願っている愚かな自
分自身が、まだ若い加奈子には理解できないままになっていた。
 「ああっ…いいっ」
 そうして加奈子は叔父からの、あのめくるめくような圧迫感を持ったつ
らぬきを受け、真横にいる祖母の目も憚らずに熱い喘ぎの声を上げた。
 四つん這いのまま叔父の強烈なつらぬきを受ける加奈子の身体の下に、
叔父の命令を受けた祖母の顔が潜り込んできていた。
 祖母の舌と口が加奈子の乳房を這い巡っていた。
 何にも例えようのない快感が、加奈子の全身を襲っていた。
 意識を失う寸前あたりで、叔父が加奈子の身体から離れた。
 畳みに胡坐をかいた叔父からの命令で、加奈子は祖母の裸身にしがみつ
いた。
 祖母にも同じ命令が下され、二人は叔父の前で激しく抱き合った。
 七十四歳の祖母と二十五歳の加奈子の裸身が、激しく揉み合うように抱
き合い唇を幾度となく重ね合い、舌を絡め合った。
 「ああっ…お祖母ちゃん…好き」
 「か、加奈子…い、いいわ」
 加奈子の下腹部に祖母の舌が這い、祖母の下腹部を加奈子の舌がいとお
しげになぞった。
 それをさも楽しげな表情で見る叔父。
 狂気に満ちた熱い空気が、六畳の室の中に長く充満した。
 精力旺盛な叔父はそれからも、祖母と加奈子の二人の身体を交互に長く
卑猥に責め立てた。
 途中で祖母のほうが先に意識を喪失し、布団にあっけなく崩れた。
 「やっぱり若い女の身体がええな」
 そういって叔父は、加奈子を長く激しくつらぬきと愛撫を繰り返し続け
た。
 「ああっ…お、叔父さんっ…いいっ…こ、こんなの…ほんとに初めてっ」
 布団に仰向けになった加奈子に、叔父のいかつい身体が深く覆い被さっ
ていた。
 死んでしまうくらいの強烈な圧迫感を、加奈子は下腹部に受け続け、叔
父のがっしりとした肩に両手を強くしがみつかせていた。
 そして加奈子は叔父からの迸りのどろりとした粘液を、顔面と口の中に
しとどに受けると同時に意識を失くした。
 それからどれくらいの時間が経ったのかわからなかった。
 顔に温かい布地が這っているのに気づき、加奈子は意識を覚ました。
 祖母の顔が真上にあった。
 祖母に温かいタオルで顔を拭かれていた。
 叔父の姿が消えていた。
 「加奈子…ほんとに、ごめんね」
 加奈子の顔を優しく拭きながら、祖母が涙声でいった。
 「あんた、もうここにはおらんほうがええよ」
 祖母はそう言葉を続けて、また嗚咽を長く洩らした。
 茫漠とした意識の中で、加奈子は祖母のいう通りにしようと、心に強く
誓った…。

 加奈子の衝撃の告白に、僕はまた何一つ返せる言葉もなく、ただ黙って
聞くだけでした。
 ここまで赤裸々に自分の恥まで僕に晒して話す加奈子の、ある意味での
芯の強さみたいなものに、僕は心の中で敬服に近い思いでいました。
 「加奈子は芯が強そうだから、大丈夫だよ。どこでも立派に生きれる」
 それが僕の加奈子への精一杯の言葉でした。
 「私…あの街に戻っても、これまでと同じように、私からあなたに連絡
することは絶対にしません。…でも、あなたからもし連絡もらえたら、そ
の時は一杯甘えちゃう」 
 「君のことを忘れることはない」
 「その言葉だけで、私、とても嬉しい…」
 僕はもう一度加奈子の細い肩を抱き、唇に軽く唇を触れさせて、
 「今夜はこのまま抱き合って寝ようか…」
 と彼女に笑顔を見せていいました。
 「朝までずっと手を繋いでいてね…」
 そういって加奈子は、手の指と指の間に指を絡ませる恋人繋ぎ
をしてきて、
 「私…今、本当に幸せ」
 とはっきりとした声で僕にいってきました。
 そうして二人は朝まで手を離すことなく、深い眠りの中に入っ
たのでした。
 一泊の旅が、遠い北国のせいか、随分と長い旅だったような気
が僕はしていました。
 眠りにつく寸前に、僕の頭の中をまた義母の亜紀子の顔が過ぎ
っていました…。


      続く

(筆者付記)
長いブランクをおいてしまい申し訳ありませんでした。
体調を崩して十日ほどの入院を余儀なくされたためですが、おかげで
無事完治しましたので、また、拙文を掲載させていただきたいと思っ
ていますのでよろしくお願いします。
尚、どなた様か私になり代り掲載の遅れを詫びてくれていたようです
がお礼を申し上げていいのかどうか、思案に暮れているところです。
また色々なご批評いただけたら幸いです。

         浩二
 

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15/11/12 03:33 (W4Dsjq2m)
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