翌、日曜日は母と娘の親子の間で、すでに密約?が交わ
されていたようで、そのことを僕が知らされたのは、義母
とラブホテルからの帰路の時でした。
助手席でしばらく無言のままだった義母が、車が市街地
近くまで来た時、フロントガラスに目を向けたまま、独り
言のように呟いたのです。
「…そういえば、由美からメールが入ってたわ。集会所
にいる時だったけど」
「そう、何だって?」
「明日は休めそうだから、お買い物に付き合ってほしい
って…」
「あ、そうなの。そういえば久しぶり部活の休みがとれ
るかも知れないっていってたなぁ」
「郊外のアウトレットモールでバーゲンあるんですって」
「そう」
「あの子がいつも使ってるバッグの留め金が壊れてしまっ
てるらしいの。…それで」
「女の人って買い物が好きなんだね。正月にもいったばか
りなのに…」
「浩二さんは好きじゃないの?」
「どちらかというと…あまり。由美とそれでよく揉めたこ
とある」
最初は呟きに近い小さな声だった義母の声が、出たホテル
から距離が離れるに従い、次第に明るくなってきているよう
でした。
自分が理性も何もかもかなぐり捨て、義理の息子である僕
の前に、女としてのはしたなさを淫らに露呈してしまったこ
との羞恥は、僕の想像を超えるくらいに大きかったようです。
「浩二さんも一緒に行けばいいのに…」
「いや、由美は僕に待ってもらったりしての買い物は、気
を使うからっていって…だから僕を誘わないんだ。…明日は
ゆっくり家で過ごすから、親子で仲良く行ってきて」
その夜の三人での食事中に、案の定、由美から買い物の話
が出て、僕は初めて聞くような素振りをしながら、丁重に辞
退しました。
日曜日当日、義母と由美が出かけたのは九時半頃でした。
バッグの他に見たい家具や化粧品店にも寄るとかで、帰宅
予定は夕方とのことでした。
昼食は義母が朝から作ってくれた、僕の好物のさつま芋入
りのカレーが用意してくれてあるようでした。
トーストとコーヒーで一人の朝食を済ませて、今のソファ
に座り漫然と新聞に目を通すと、『北陸新幹線、今春の開通
に向けて』という大きな見出しを見て、僕はまた新潟県阿賀
野市近辺にいるという野村加奈子のことを、ふと何気に思い
出しました。
そして連鎖的に長く会っていない、新潟出身の大学の同級
生の顔を思い起こしていました。
浅野祐一という名前で、大手生命保険会社の新潟支店に勤
めているはずでした。
一年前の僕と由美の結婚式に、友人の一人として出席して
くれていました。
どちらかというと無口なほうの僕と較べて、誰とでも気軽
に喋れる、社交的で明るい性格の男でした。
大学には本格的な登山部もあったのですが、僕も浅野も誰
でもが気軽に登れるような、手頃な高さの山を歩くのが好き
で、『小山クラブ』というふざけた名前のサークルを作って、
標高千メートルくらいまでの山々を一緒に仲良く登り歩いた
仲間の一人でした。
確かまだ結婚はしていないようで、僕の結婚式の時にも、
先越されたけどバテないようにな、と笑いながら祝福してく
れたのを覚えています。
いずれ近い内に、僕は野村加奈子のいる新潟県阿賀野市次
郎丸というところを訪ねる腹積もりでいたのもあって、急に
その友人の声が聞きたくなり、携帯で名前を探し発信ボタン
を押していました。
少しだけ間があって、浅野の懐かしい声が耳に入ってきま
した。
「やぁっ、浩ちゃんっ」
「ようっ、祐ちゃんっ」
学生時代からお互いにそう呼び合っていました。
「久しぶりだね。元気でやってる?」
「携帯の名前見てびっくりしたよ、浩ちゃん」
「いや、今朝の新聞で北陸新幹線、間もなく開通の見出し
見たら、急に祐ちゃんの顔思い出してね」
「ああ、それは嬉しいなぁ、お世辞でも」
「お世辞なんかじゃないよ。…でも、ちょっと他の用件も
あったんだけどね」
そのあたりまで話していて、僕は友人の浅野の声に少し異
変を感じていました。
声はとても明るかったのですが、僕の記憶に残っているよ
うな快活さや、覇気みたいなものがないような気がしたので
す。
そのことを尋ねると、浅野から思わぬ告白があり、僕はひ
どく驚いてしまいました。
腸閉塞という病気で、浅野は三週間ほど前から新潟市内の
病院に入院しているというのでした。
症状的には危険なことはないということでしたが、食事制
限が当然あって、八キロほど体重も減っているとのことでし
た。
見舞いと労いの言葉をいって、長電話の了承もとってから、
「…ところで祐ちゃん、阿賀野市って知ってるよね?」
「阿賀野市?…ああ、前に浩ちゃんと登ったことのある五頭
山のあるところじゃないか?…雨の日だったよね」
「僕も覚えてるよ。…で、そこの次郎丸っていう地名がある
と思うんだけど、知ってるかな?」
「次郎丸?…ああ、名前は聞いたことあるけど、行ったことは
ないなぁ…。そこが何か?」
「いや、そ、そこにちょっと知り合いがいるって聞いたんで…」
「ふぅん、でも山奥の田舎のほうだと思うよ」
僕のほうが少し口篭ったので、浅野は気を利かせてか、あまり
深くは追求はしてきませんでした。
久方ぶりの友人との会話の最中に、病気の浅野には申し訳なか
ったのですが、僕の頭の中に色々な策謀めいた考えが浮かんでき
ていました。
「見舞いには必ず行くよ」
まだ一ヶ月は病院暮らしだという友人の浅野にそう約束して、
養生を祈ってから僕は携帯を切りました。
浅野には申し訳ない気持ちでしたが、そう遠くない日にこのこ
とを理由にして、新潟県阿賀野市次郎丸まで出かけようと思って
いて、僕は妻の由美への口実を考えていました。
それから居間のソファから立ち上がると、僕の足は自然に義母
の寝室に向かっていました。
誰もいなくてひんやりとした室内でしたが、義母のあの心地よ
い残り香が漂う中に入った僕は、そのまま机のあるほうに向かい
ました。
机の前の椅子に座ると、僕は迷うことなく義母の日記が入って
いる引き出しを開けました。
何気に一番上のノートを取り上げ、ペラペラと捲り拾い読みす
ると、最近の僕といる時のことに字数の大半を割いているような
感じでした。
次のような文章が目に入りました。
…今度こそは、次こそは必ず浩二さんにいおうと、心に強く思
っていても、彼の目を見て声を聞いてしまうと、私の気持ちは他
愛もなく揺らいでしまい、強く思っていたはずの決心と決断は、
すぐに脆弱な戯言になってしまう。
あるはずと思っていた理性の心が、その片鱗だけかすかに覗か
せるだけで、彼の胸に抱かれてしまうともう儚く雲散霧消してし
まうのだ。
そして今の私は浩二さんといない時でさえ、彼のことを考え思
い詰めるようにまでなってしまっている。
人としても、そして女としてもこれだけの年齢を重ねてきてい
る自分が、死にたくなるほど情けないことと、毎日のように痛感
している今日この頃の私…。
と自分の不甲斐ない心情を赤裸々に吐露していたり、生真面目
な性格の分だけ、自分で自分を責めることが多く書かれていまし
た。
それともう一つ、ひどく気になることが短くでしたが記載され
ていて、日付を見ると、まだ数日前のことのようでした。
それは、あの町内会長の小村のことが書かれていて、義母が少
し不安な気持ちを四、五行ほどで吐露していました。
…集会所からの帰り際、小村さんに声をかけられ呼び止められ
る。
浩二さんが掛け合ってくれて以来、初めての会話だったが、今
頃になってこれまでの非礼の詫びをいわれる。
そして別れ際の時、「私の気持ちは浮ついたものでは決してな
く、今も真剣です」といわれ、ひどく思い詰めたような
視線を受けたことに、小さく私の胸は慄き騒いだ…。
しつこい親父だ、という感想を僕も持ちましたが、義母からも
直接的に自分にそのことを話してこないのは、それほどに案じる
事態までにはなっていないのかと、読み流すに留まりました。
生真面目な義母には申し訳ない気持ち気持ちでしたが、不真面
目な僕はさっさとそのノートを閉じ、以前に見た四年前の青木と
のことが書かれているノートを探し出して、前に盗み読んだ後の
続きのページを見開いていました。
青木との淫らな関係が四ヶ月ほど続いた、ある夜のことが書か
れているのを見つけ出し、目と頭をそこに集中させました。
…青木からの携帯が入ったのは、私が帰路につく車に乗ってす
ぐで、夕刻の六時前だった。
それまで二週間ほど彼からの連絡は途絶えていた。
くくっ、と鼻を鳴らすような薄気味の悪い笑い声を、青木はい
つも最初にしてくる。
慣れることの決してない青木の癖だった。
「遠いとこの現場に行ってて、今日の昼過ぎに戻ったところだ。
これから迎えに行く」
と青木は一方的に通告してくる。
「困りますっ、急にいわれても」
という私の拒絶の言葉など意に介することなく、
「七時には行くから、いつものところで待ってろ。…それとこ
の前みたいに、パンティ脱いでおけ。くくっ」
そういって青木は私の返事を待つことなく、自分から携帯を一
方的に切った。
青木との待ち合わせ場所は、郊外にある大規模なホームセンタ
ーの駐車場になっている。
学校からその駐車場までは二十分もかからなかった。
私は取敢えず車を学校から出し、少し離れたコンビニの広い駐
車場に車を止めて、娘の由美に嘘のメールをうって、帰宅が遅く
なる旨の連絡をした。
車のエンジンを止めて、私は思いに耽った。
絶望という言葉が何度も頭の中を駆け巡った。
いつでも青木は自分の都合だけで私を呼ぶのだ。
さすがに学校の授業中はなかったが、突如、夜遅くに呼ばれた
りすることがある。
二週間前の時もそうだった。
夜の八時過ぎに青木に呼び出された。
娘の由美と二人で家にいる時だった。
児童の父兄からの電話で、子供が交通事故に遭い病院に運ばれた
と娘に哀しい嘘をついて私は家を出た。
娘も自分が教師ということもあって、母親の不安げな顔に深い疑
念を持つことなく送り出してくれるのが、心にひどく痛かった。
途中で青木から携帯が入る。
子供が今夜は祖母の家に行ってるから、家に来いという。
途中でパンティ脱いで入って来いとも彼はいった。
酒に酔っていそうな声だった。
途中の暗い路側帯に車を止め、私は運転席に座ったままフレアス
カートの裾の中に両手を入れ、ガードルとパンティストッキングを
脱ぎ下ろした。
最後のショーツにも手をかけ、両足首から抜いた。
青木のアパートのドアを開けると、すぐに酒臭い匂いに全身を包
まれた。
居間まで足を踏み入れると、
「先生っ、こっちだよっ」
と青木の呼ぶ声が、隣りの寝室から聞こえてきた。
照明が煌々と点いている。
敷きっ放しの布団の上に、赤ら顔をした青木が仰向けに寝そべっ
ていた。
酒に酔ったとろんとした目をした青木が手招きをしながら、
「先生よ、パンティ脱いできたか?」
と辿々しい声で聞いてきた。
「はい…」
私に逆らうことは許されていなかった。
「スカート脱いで見せてみな」
青木の側まで寄った私に命令が下る。
スカートのホックを外すと、布団の上に静かな音で落ちて、
私の下半身が青木の前に露呈した。
「俺の顔を跨いで座れ」
「…………」
声を出さないまま、私は青木の顔の真上に立ち、そのまま
両足の膝を折った。
太腿で青木のぎらついた目をした顔を挟むように、私は座
り込んだ。
青木の濡れた舌がすぐに、私の露わになった下腹部の茂み
の中に突き刺さってきていた。
「むむっ…」
思わず声が上がってしまう私。
青木の舌が、私の茂みの中で力強く動き出してきていた。
私に逃げることや抗うことは許されていなかった。
最初の理不尽な陵辱以来、十回以上は青木の毒牙の餌食と
なり、卑劣で狡猾で卑猥な男の性技の前に、私は不覚にも教
育者という立場を忘れさせられ、淫ら極まりない女として
はしたなく悶えさせられてしまっていた。
もう地獄に堕ちた自分のことよりも、娘の由美のことを考
えると、このことを公に晒すのは、正義であるべき教育者の
当然の責務でもあるにも拘わらず、何もできないままでいる
自分が本当に哀しかった。
青木の狡猾な舌が、私の下腹部で縦横無尽に駆け巡ってい
た。
「ああっ…」
自らの意思からでは断然なく、女としてはしたなく恥ずか
しく堕ちていく寸前の自分を私は意識した。
それでも身体の下のほうから、堪えても堪えても突き上が
ってくる卑猥で熱い官能に、私はついに屈した。
「ああっ…お、犯してっ」
青木が求め悦ぶ声を私は自分の口から発し、上体を前に倒
し込んでいた。
青木が私の股間から顔を離し、上体を起こすと布団に胡坐
をかいて座った。
「こっちを向け」
私の背後から青木の声がした。
青木に剥き出しの臀部を晒し、前のめりになっていた自分
の身体を起こして、彼のほうに向けた。
青木は上半身はランニングシャツで、下は派手な色のトラ
ンクス姿だった。
胡坐をかいた青木の前ににじり寄る私。
青木の前に身を屈めるようにして、彼のトランクスに手を
添える私。
トランクスを下げ下ろすと、どす黒く照明に映える青木の
半勃起状態のものが露出した。
私の口が露出された青木のものをゆっくりと含み入れた。
そのまま丹念に私は顔を上下に動かした。
青木の手が動いて私のブラウスのボタンを外しにきていた。
青木のものを口に咥え入れたまま、ブラウスが脱がされ、
キャミソールの下のブラジャーのホックが外し取られた。
私の口の中で青木のものがひどく膨張し、硬度を増してき
ているのがわかった。
ああ、これでまた私はつらぬかれ、激しく悶えさせられて
しまうのだ、と私は青木のものへの愛撫を続けたままそう思
った。
この家に入った時からか、あるいは車の中でショーツを自
らの手で脱いだ時からなのか、自分の心から理性がいとも容
易く消滅したのがどこからなのか、私はわからないままでい
た。
もうそのことを考えようとする気力さえも、私からは失せ
ていた。
私の口の中で隆々と膨張し、脈々と硬度を増す青木のもの
がいとおしいと、その時の私は正直なところそう思ったのは
事実だ。
早く青木につらぬかれたいと私は思っていた。
それから私は布団の上に四つん這いにされた。
「ああっ…いいっ…いいわっ」
青木の固く屹立して長さも異様にある太いものが、私の体
内に突き刺さってきた。
堪らない快感に私はすぐに声だけでなく、つらぬかれたま
まの全身を強くうち震わせた。
亡くなった夫との行為の時には、一度として感じたことの
ない官能の悦びだった。
このまま死んでもいいと私は思った。
「どうだ、メス豚っ」
「ああっ…いいっ…いいですっ…し、死にそうっ」
「教育者もカタなしだな、おい」
「ああっ…ほ、ほんとに…死にそうっ」
「よう、どこがいいんだ?先生よっ」
「ああっ…は、はいっ…お、おめこが…」
「誰のだ?」
「わ、私の…おめこが…気持ちいいですっ…ああっ」
この後、青木がまた胡坐をかいた姿勢になり、私は彼の腰
を跨ぐようにして座らされ、胸と胸を合わされたまま激しく
下からの突き上げを下腹部に受け続けた。
私は両腕を青木の首に強く巻きつけ、下からの突き上げに
堪えていた。
彼の唇が私の唇を塞いできた。
青木の酒臭い息と唾液が私の口の中に充満した。
もうそれに対する嫌悪感も何もなかった。
「俺のことが好きか?」
と青木が私を抱き締め、下からの突き上げを繰り返しなが
ら聞いてきて、首を何度も頷かせる私。
口に出していえ、と青木がいうと、
「ああ…は、はいっ…あ、あなたが好きです」
と応える私。
青木の何もかもが神だとさえ思えるくらいの、深い忘我の
境地にまで、すでに私は追い詰められていた。
「ああっ…も、もう…私」
「このままで逝かせてやる」
「き、きてっ…も、もっと突いてっ」
私は叫ぶようにそういって、青木の赤黒い筋肉質の背中に
強くしがみついていた。
暗い車の中でシートに深く背をもたげながら、私は二週間
前の青木との情交を、目を閉じて思い起こしていた。
時計を見ると約束の時間の三十分前だった。
青木は今夜はホテルに行くといっていた。
周囲に車が止まっていないのを確認して、私はそこでスカ
ートのホックを外し、ガードルとパンティストッキングとシ
ョーツを脱ぎ下ろしていた。
脱いだショーツに触ると、ある部分のところだけがひどく
滴り濡れているのがわかった。
青木のあの薄気味の悪い笑い声には慣れるということはな
かったが、スカートだけの下半身になった時、私の心の片隅
のどこかに、恋人にでも抱かれる前のような恥ずかしいとき
めきのようなものを感じてしまっていることに唖然とした思
いになった…。
読み終えた後、義母の身体を女として妖艶に開花させたの
は、もしかしたらもうこの世にいない青木なのだったのかも
知れないという、少し嫉妬に近い思いが僕の脳裏を過ぎりま
した。
由美と買い物に出かけている義母が、急に恋しくなってき
ていました。
それから義母と由美が帰宅した夕方まで、僕は何か腑抜け
状態になったような気持ちで、何することもなくだらだらと
過ごしました。
夕食は外でしようということになって、僕の運転で郊外の
フランス料理店に出かけました。
駐車場に車を止めると、由美はトイレに行きたいからとい
って先にスタスタと早足で歩いていきました。
義母が歩いている真横に僕は素早く近づいて、
「亜紀子としたかった…」
と耳元に囁いてやりました。
まぁっ、という驚きの表情をした義母の顔が、薄闇の中で
も赤く染まったのがわかりました…。
続く
(筆者付記)
思いついたように日を置いての投稿で申し訳ありません。
皆様の温かいレスやご指摘で多くなりましたので、次回から
また新しいレスにて投稿させていただきますのでよろしくお
願いします。
レス20の方、嬉しい応援ありがとうございます。
筆者 浩二
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