それからベッドの上で茫洋とした微睡みの中にいた二人で
したが、先に意識を覚ましたのは僕のほうでした。
義母のほうは僕の胸に片頬をぴたりと密着させるようにし
て、眼鏡の奥の目を深く閉じていました。
安らかそうな義母の寝顔を見て、もうしばらくは起こさな
いようにしておいてやろうと思った僕でしたが、手をほんの
少し動かせただけで、彼女の目を覚まさせてしまっていまし
た。
「ごめん、起こしてしまったね…」
と詫びの言葉をいうと、
「ううん、いいの…」
と義母はいって徐に顔を上げると、眼鏡の細いフレームに
手を当てながら、あたりを見回すような仕草を見せていまし
た。
「私…」
何かをいおうとして、義母はすぐに口を噤みました。
義母なりに今の状況が呑み込めたようで白かった頬に仄か
に朱が差してきているのがわかりました。
「シャワーが浴びたい」
僕のその声に、義母は我に返ったように、
「あ、ごめんなさい…」
と短くいって、慌てた素振りで僕の身体から離れました。
僕がシャワーを浴びて出てくると、それを待っていたかの
ように、
「私も…」
といって頭にタオルを巻いて、入れ替わりにバスルームに
入っていきました。
腰にバスタオルを巻いた恰好で身体を拭きながら、何気に
手に持ったテレビのリモコンスイッチを押すと、いきなりア
ダルトビデオが放映されている画面が映し出されました。
しかも音量も大きくなっていて、僕は思わず義母のいる
ガラス張りのバスルームに目をやり、慌ててボリュームレベ
ルを下げました。
画面を見ると、和室に敷かれた布団の上で全裸の三十代く
らいの女が四つん這いにされて、背後から四十代くらいの
男につらぬかれている画像が映されていました。
画面の背景には男の遺影の置かれた小さな仏壇が見え、布
団の周辺には脱がされた黒の喪服が散乱していました。
白足袋だけ残されて、つらぬかれている女の喘ぎ声が間断
なく聞こえ、淫靡に悶えている顔が何度もアップで映された
りしていました。
どうやら夫を亡くした未亡人が男に犯されているというシ
チュエーションのようで、男のつらぬきに呼応するかのよう
に女の声は激しさを増してきていて、クライマックスが近づ
いている感じの場面でした。
バスルームのドアの開く音が聞こえたので、僕は慌ててリ
モコンスイッチをオフにしました。
この時、僕の頭の中にある閃きが浮かんでいました。
義母は胸にバスタオルを巻きつけた恰好で、こちらに向か
ってゆっくりと歩いてきていました。
手に持ったタオルで顔を拭きながら、恥らうような素振り
で、ベッドの僕よりも少し離れたところに座りました。
何を話せばいいのかわからなくて、僕はそのまま上体を後
ろに倒しベッドに仰向けになりました。
天井の鏡で自分の寝姿を見るともなしに見てから、唐突に、
「亜紀子…」
と義母のほうに顔を向けて声をかけました。
「はい…?」
と俯けていた顔を上げて僕を見てきた義母に、
「こっちへおいで…」
と手招きして彼女を誘いました。
少しだけの間をおいて、義母がベッドの上を這うように僕
に近づいてきました。
「あっ…」
と義母が短い声を上げました。
近づいてきた義母の片方の細い手首を掴み取ると、僕が強
い力で自分のほうに引き寄せたのです。
小柄で華奢な義母の身体は、いとも容易く僕の腕の中に巻
き込まれ、驚いた顔が僕の顔のすぐ側にまできていました。
「亜紀子…」
ともう一度僕は義母の名を呼びました。
「はい…」
義母は僕の腕の中から逃げることもなく、小さな声で応え
てきました。
「もう一度、亜紀子を抱きたい…」
僕が唐突にそういうと、
「…シャワー浴びたのに」
と義母はまた小さな声を返してきました。
「したい…」
そういって僕は片手に持っていたリモコンスイッチをテレ
ビのほうに向けて電源を入れました。
つい今しがた淫靡に閃いた、義母にアダルトビデオを観せ
るということを、僕は実践する気になっていました。
黒い画面が二、三秒続いた後で、制作会社のロゴが映し出
され、長い文字列の画面の後、瀟洒な住宅の全景を背景にタ
イトル名が白く浮かび上がりました。
『義母が性奴隷に…』
という扇情的なタイトルでした。
僕の顔の下にいた義母が少し驚いたように顔を上げて、眼
鏡のかけていない目を細めるようにして、テレビ画面に目を
向けていました。
画面は建物の全景から家の中に変わり、台所で忙しなげに
弁当を作っている、主役の女優らしい女が映り、その彼女の
独白が長く続きました。
独白の内容は、二年前に再婚した夫が、一年前に不慮の交
通事故で亡くなり、今は夫の連れ子の高校三年生の息子との
二人暮らしのようです。
そしてその息子は内気な性格で、学校で何人かの不良たち
に苛めを受け、金品を強請られたりしていたのを、気丈な義
母は学校に出かけ、担任に実情を話し、結果的にその不良生
徒たちは退学か停学処分を受け、息子は大学進学に向けて勉
強に励んでいるという設定のようでした。
主役の義理の母となる女優は、四十代半ばくらいの年齢の
ようで、プロポーションもよく色白できりりとした整った顔
立ちをしていました。
こういう類のビデオは、話としてあることは知っていても、
義母のほうは、おそらくまだその内容がよく把握できていな
いようで、眼鏡のない目で見るともなしに見ているという感
じでした。
ビデオはさらに進み、ある日のこと、義母が一人で家にい
る時に、息子への苛めで学校から処分を受けた生徒の何人か
が訪ねてきていました。
玄関口で驚いた顔で応対に出た義母の前で、最初はしおら
しく息子への苛めに対して、頭を下げていた生徒たちが
突然豹変し美しい義母に襲いかかるのです。
四人の不良生徒たちに強引に居間のほうまで連れ込まれて、
瞬く間に衣服を剥ぎ取られ、不良生徒たちに屈辱的に犯され
る場面が延々と続くのでした。
画面上で義母役の女優がが発する、激しい抗いの声が聞こ
え出した頃から、義母はテレビから眼を背け、僕の胸に顔を
埋めてきていました。
僕のほうはというと、すでに下腹部には愚かにも男として
の反応が出てきていました。
目を画面に向けながら、僕は義母の身体に巻いていたバス
タオルを剥がし、彼女の丸く小さい乳房に手を添えていまし
た。
全裸にされたビデオの義母が四、五人の不良生徒たちにソ
ファの上で、淫靡な蹂躙を受けているのがまだ長く続いてい
ました。
この頃のビデオのぼかしは、自分が若い頃に観たものと違
って女性の股間の漆黒や男性のものも、かなり具体的に観れ
るようになっていることに少し驚きながら、僕は食い入るよ
うに観ていました。
義母の乳房に添えていた僕の手に、次第に力が込められて
いて、左右の膨らみを忙しなげに行き来してました。
画面の義母は全裸でソファに仰向けにされて、一人の不良
生徒の激しいつらぬきを受けていて、顔のあたりに他の二人
の生徒が差し出した下腹部の屹立を握らされ、交互に口での
愛撫を強要されていました。
不良生徒たちに襲われて、悲鳴のような声を上げて激しく
抵抗していた義母が、長い屈辱的な陵辱を受けて、いつしか
喘いできてしまっているというお定まり的なシチュエーショ
ンでしたが、久方ぶりに観るアダルトビデオに、愚かな僕は
男としての反応を露骨に下腹部をさらに興奮させてしまって
いたのでした。
ビデオの画面で長く繰り返される陵辱の行為に、僕はまる
で追随するかのように、義母の乳房への愛撫に気持ちを強く
込めて精を出していました。
「亜紀子も観て…」
と僕は義母の耳元に囁くように強要しました。
乳房への僕の執拗な愛撫に、義母の吐く息が荒く大きくな
り出しているのを僕は察知していました。
テレビから義母役の女優の、激しく悩ましげな喘ぎ声が途
切れることなく長く続いていました。
そういう異様な雰囲気の中で、義母への淫靡な愛撫を続け
ている自分自身に、僕は気持ちを昂めてしまっているところ
も、正直なところあったように思います。
義母のもうかなり上気しきったような顔が上がり、激しく
悶える声が、絶え間なく聞こえるテレビ画面に向けられまし
た。
このようなただ卑猥なだけのビデオを観ること自体が、義
母にはおそらく初めての体験のことだと断言できました。
義母は眼鏡のない目でしたが、テレビ画面ではどういう光
景が繰り広げられているのかはわかったようで、すぐにまた
視線を伏せていました。
「ああっ…こ、浩二さん…シ、シヤワー浴びたのに」
そういいながら義母は、僕の裸の胸に顔を強く押しつけて
きていました。
「亜紀子、キスして…」
義母の両肩を抱くようにして、僕は短く囁くようにいいま
した。
少しの間があって、僕の胸に伏せていた義母の顔が上がっ
て、上からゆっくりと唇が彼女のほうから重ねられてきまし
た。
口の中に舌を最初に差し入れてきたのも、義母のほうから
でした。
もうその時点あたりから僕のほうの自制心は、他愛もなく
崩壊してしまっていました。
唇を重ね合い口の中で舌を絡め合わせたまま、僕は義母の
身体を強く抱き締め、仰向けになっていた身体の向きを変え、
自分から彼女の身体を征服しにいったのでした。
卑猥なビデオに感化されたのかどうかは定かではありませ
んでしたが、義母のほうの反応も一層激しくなっていて、ま
たしても二人は、熱く淫靡な官能の底のない渦の中深くまで
埋まり込んでいったのでした。
二人は結局、シャワーを二度浴びることになり、ホテルを
出た時には、すでに陽は西に大分傾いていました。
明日の日曜日は、由美が部活がなく、久しぶりの休みだと
いうことを僕も義母も聞いて知っていました…。
続く
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