弟に言われた通り髪を乾かしていれば、今頃燈子は風邪などひいていないはずだった。
物臭な姉を見やる想太の目は、まさにそのことを意識させた。しかし微熱のある燈子の頭は、弟に触れたいという思いばかりが繁殖している。
夕食後のリビングで、仲良くソファに座っている姉弟を気にする者はいない。とは言っても、両親は背後から二人の向こう側のテレビを見ている状況下だ。
想太は姉のおでこから剥がれそうな冷えピタを直してやる。
「燈子、部屋で寝れば?」
熱に浮かされ一層色っぽくみえる姉を意識しないように、想太は見てもいないテレビを見始めた。
その視界の隅でコクンと頷いた燈子は、ふらっと立ち上がり、へなへなと想太に倒れかかった。
「ちょっとーテレビ見えないよ!想太、燈子を部屋につれてって」
母の言葉に、想太はほとほと嫌気がさしたが、姉の熱く柔らかい体を支えると、黙って言う通りにした。
彼の内心の葛藤を知る由もない燈子は、少し滲む想太の汗を感じながら、彼がただの弟でしかないことを嘆きたくなった。細くも逞しい腕に、たとえば意図的に胸を押し付けても、想太には何の効果も無いのだと。
しかし、珍しく想太は姉の胸の感触をそのまま感じていたい気になった。付け入っているという自覚はあった。
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