次の日、その真理子から変なメールが入りました。
<久しぶりに健太と逢ったけど、随分大人になったね。驚いちゃった。お姉
ちゃん、楽しみでしょう?>
普通に読めば、ごく当たり前の文章だと思うのですが、見方によっては意味
深な捉え方も出来そうな文章なのです。
(何なのよ、これ? 真理子ったら。)
彼も妹も何か私に隠し事をしていると、この時私はハッキリと感じ取れまし
た。
その不安は、意外と早くに私の知るところとなりました。
それは息子の携帯電話でした。
夜風呂に入っている時、何気な無く、彼の携帯に目が行きました。
何とそこに、真理子からの着信履歴が残っていたのです。
私は、悪いと思いながらも、そのメールを覗きました。
<叔父さん明日居ないから・・、遊びに来なよ、私はいつでも良いよ?>
その文章を読んで、私は唖然としました。
妹が何の目的で、彼を誘っているのか判らないが、わざわざ亭主のいない事
を伝えているのが気になったのです。
それでその日、彼の行動をそれとなく監視していたのですが、案の定、夕食
近くになっても、帰える様子がありません。如何やら真理子の家に行ったに
違いません。
私はアホ面でテレビを見ている夫に、
「チョッと真理子の処に行って来る・・。」
そう伝えると、その足で妹の家に向かいました。
正面からいきなり乗り込んでは意味が無いので、そこは何度も来ている妹の
家です。
庭先に廻わると、そこから居間を伺う事にしました。
処が、意外やその居間に人の姿は見えず、テレビもかかっていない。
(如何言う事なのよ? 二人は何処に行ったのよ?)
その時、突然私の中で何かが弾けました。
私は庭先から部屋の中へ上がり込み、一目散に真理子達夫婦の部屋へ向かっ
たのです。
その部屋の扉に手をかけ、一気にドアを開けようとしました。
「健太君って、お姉さん相手に、いつもこういう事しているんだ? 」
突然彼の名が呼ばれ、思わずその手が止まりました。
「その事はノーコメント。叔母さんの方は如何なの?」
間違いなく息子の声でした。
扉の向こうに、彼が居るのは間違いない事でした。
「教えてくれたら、私も健太君の知りたい事教えてあげる。」
真理子ったら・・なんて事言っているの。絶対に許さない!
今に直ぐにでも、開けて飛び込みたい心境でしたが、もう少し話を聞いてい
たい。
「叔母さん、僕だって叔母さんが結構遊んでいる事ぐらい知っているよ。そ
うでしょう?」
「だから、健太君も私の事、口説いたんだ。」
(えっ!)
それは驚きでした。
(息子が真理子を口説いたって・・如何言う事?)
「流石この間は私も驚いちゃった、まさか健太君があんな事言うなんて。」
「正直な気持ち言っただけだよ。いけない?」
なんかすごく生々しい会話が続いていました。
「普通言わないでしょう、健太君の母親の妹よ・・私は?」
「判っています。叔母さんの立場位は。」
「その私をつかまえて、やらしてくれとは・・、普通言わないでしょう?」
「でも、叔母さん、させてくれた・・。」
後頭部を強く打たれた気分です。
私の恐れていた事が起きていたのです。
しかも、それは私が思い描いていたものと、少しばかり違っていたのです。
私が考えていたのは、あくまでも息子が被害者でした。
しかし、二人の話によれば、誘ったのは息子の方らしい。
そうなると息子はあの日、私と真理子の姉妹二人を抱いた事になる。
とても、部屋の中に飛び込む勇気は無くなっていました。
ただ、この日を境に、私達の関係は更なる進展を迎えるのですが・・。
<影法師>
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