「真ちゃん、そう言う訳なのよ。真ちゃんがダメだって言うなら、私断るか
ら。」
寿美子は真一を怒らせない様に話すと、
「いいよ、行って来なよ。僕の事は気にしなくていいから。焼きもちなん
か、焼かないからさ。」
真一のその言葉で、寿美子の顔に笑みが浮かんだ。
「―ありがとう、真ちゃん、ありがとう。」
寿美子は、そう言って真一に抱きつくと、その唇に自分の唇を何度も押し付
る事を繰り返した。
その感情が高ぶったのか、
「―ねえ、真ちゃん、オマンコしよう?」
突然寿美子がそう言いだした。
「―ねっ、そうしよう・・。」
真一に反対する理由は無かった。
夕食のかたづけ終えた部屋に、寿美子が急ぎ押し入れから蒲団を取り出す
と、畳の上に延べた。寿美子は、彼の方を眺めながら、着ていた服を脱ぎ捨
てると、その蒲団に身体を滑り込ませた。
「真ちゃん、はやく・・・・。」
寿美子が真一を手招いた。
それが、寿美子の自分に対する気づかいと言う事も、真一は判っていた。
二人が支え合っていくには、これしかないと寿美子は思っていた。
この前までは、夫が家を支え、寿美子はその家計を支え、二人で真一を育て
る為の家庭を築いていた。それが、思いがけない出来事で、その家庭は崩れ
去った。
それぞれがその役割を失った今、寿美子が全てを支える事には、無理があっ
た。
当然、真一に頼らざるを得ない部分も出て来た。
それに対し、彼も又責任の一端を担う決心をした。
「僕が、母さんを支えてあげる。」
その言葉が、寿美子に、彼との生活を決意させたので有る。
真一の決意に対し、寿美子に応えられるものがあるとすれば・・。
<影法師>
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