その頃はまだ、親子3人の暮らしをしていた。
しかし、寿美子と真一との間に、まだ既成事実は存在していなかった。
だが、すでに寿美子には、息子真一からその胸の内を知らされていた
寿美子と夫の関係があまり上手くいっておらず、毎日様に夫の怒鳴り声が絶
えない家庭であった。寿美子を慰めるのは、専ら母親っ子の真一の役割だっ
た。一人っ子の彼を、寿美子も又可愛がっていた。そんな彼が、常に女とし
ての弱い面を見せていた母に対して、特別な念を抱くのは、むしろ時間の問
題だったと言えるだろう。
(大丈夫だよ、母さん・・・気にしないで・・、平気だから・・・。)
そう何度と無く励ましながら、母を抱く手に、自然に力が入っていた。
母親から・・か弱い女性へと、その姿が変わって見え始める様になった。
ある時、その思いを寿美子に打ち明けた。
「ダメだよ、真ちゃん、そんな事考えちゃだめ・・、彼方は私の子供なんだ
よ・・。」
母親として、凛とした態度で彼を窘めたつもりではいたのだが、寿美子が考
える程、真一にとってそれは簡単なものでは無かった。
寿美子がそれに気付いたのは、本当に偶然の出来事だった。
ある日、いつもの様に寿美子は汚れた下着の洗い物をしていた。
いつもなら、全員の分をまとめて洗濯そうに投げ入れてしまうのだが、その
日、たまたま寿美子の下着一枚だけが外の床に落ちた。
それが寿美子ショーツだった。手に取った時、股間部分の汚れに目が行っ
た。
それまでは、そんな処は汚れてはいなかったのだ。しかもその匂いは、寿美
子もよく知る、男の精液そのものの匂いだった。
寿美子は、すぐにピンと来た。
その汚れが、息子真一の付けたものだと言う事に。
息子が、自分を性の対象として見ている事に、改めて驚かされると同時に、
息子が気の毒にも思えた。
寿美子の下着を使って、その欲望を発散させている姿が、寿美子の目に浮か
んだ。
その場所が何処かは判らないが、寿美子の下着を使い、ペニスを擦りあげる
息子の哀れな姿が・・。
(ダメだよ・・そんな事ダメ・・・。真一。)
激しく首を振りながら・・心の中で我が子真一を叱る寿美子だった。
それ事だけなら、それで全てが終わった話しかもしれない。
だが、事はそれでは済まなかった。
寿美子が用心していた分、その発見は早かった。
再び同じ事が、寿美子によって見つけられたのだ。
「真一・・・これ。」
初めの時は何も言わなかった寿美子だが、さすが2度目の時、寿美子は彼の
部屋に赴き、黙って彼の目の前にその下着を差し出した。
「お願いだから・・こう言う事はもう止めてね。真ちゃんの気持は判るけ
ど、こう言うのは母さん嫌なの。」
寿美子の不用意な一言が、真一を狂わせた。
<影法師>
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