「何処かで時間つぶしてから帰って来て・・。」
私は駅を降りると、浩二にそう言いました。
「ああ、判っている。」
「一緒に帰ったりしたら、近所の目も有るしね・・。」
別に知られている訳ではないのですが、慎重を期してです。
ご近所の人たちの口から、主人の耳に入らないとも限らないからです。
「母さん、契約守れよ、破ったら許さないからね。」
「判ったわよ。」
何かいけないものに、サインさせられてしまった感じ。
家庭内情事は、こんな風にして、浩二との間で取り決められました。
実に変な話ですが、主人とするのに、一々浩二に許可を貰わないとならない
のです。
それは即ち、今夜主人とするから・・という報告でも有ります。
もし破ったら如何なるのだろう・・?
そんな事を考え無い訳でもありませんが、あまり刺激しない方が良いだろう
と思い、そう心がける様にはしました。
普段は、主人が単身で家を開ける前の状況を、意識的に心がけました。
私と浩二の仲が、それ以前と異なっていては、おかしな風に勘繰られるかも
しれません。
ですから、極力それを意識して、普通(?)の母と息子を主人の前では演じ
なくてはなりません。
とは言っても、主人が戻ってからは、浩二も家にベッタリと言う事が無くな
りました。
夫のいない半年と言うものは、正直良く飽きもせずやりあったものだと、今
更ながら思います。夜になれば、嫌でもそれを意識せざるを得ません。
二人の禁断の行為を邪魔する人も、遠慮すべき人もいないのです。
その為の時間は、有り余る程ありました。
その気にさえなれば、朝から夜まで・・体力の続く限り・・可能でした。
事実、私達もそうでした。
緩んだタガを締めるのは、容易なものではありません。
私も、浩二も間違いなくその行為にのめり込んでおりました。
主人が帰って来てからは、3人が顔を合わせている時間は少なくなり、その点
は私も気は楽でした。
前にも話した通り、情を交している男2人が、目の前に居ると言うのは実に肩
がこります。
でも、それが思いがけない事態になって行きました。
<影法師>
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