「おはよう。」
キッチンで起きて来た俊夫に喜美子が声をかけた。
「おはよう。」
それに応える俊夫は、まだ寝むそうだ。
その理由は二人だけの共通の秘密だ。
そばで、父親が早くも朝食を始めていた。
「父さん、おはよう。」
「おう、おはよう、夕べは悪かったな、先に酔いつぶれちゃったみたい
で・・。」
父親は何も覚えていない様だった。
「俺も弱くなったものだ、あれ位の酒で寝ちまうなんて。」
父親の話を、母と息子は黙って聞いていた。
二人はつい先ほどまで一緒だった。
喜美子が朝食の支度をしなければならない為、止む無く離れる事になった。
そうでなければ、未だにベッドの中にいた事であろう。
「俊夫、たまには一緒に出掛けるか?」
父親がそう言って誘った。
すかさず俊夫は、
「今日休む事にしているから・・悪いけど一緒は行けないな。」
「そうか、じゃ、このまま又アパートに戻るか?」
「そう言う事になるね、又その内顔を見せるよ。」
そんな父と息子の会話を、喜美子は複雑な気持ちで聞いていた。
喜美子が夫を玄関先まで見送った。
「今夜はいつも通りに帰れそう?」
喜美子は自分でも意識した訳じゃ無いのに、そんな言葉が出た。
「そうだな、少し遅くなるかもしれないな。」
「そうですか、判ったわ。遅くなるようなら電話して・・、アッ、携帯の方
がいいわ。
私、買い物に出ているかもしれないから・・。」
次々に喜美子は予防線を張っていた。
喜美子の中で、夫に対する秘密が、少しずつ膨らんで行くのが判った。
「出かけたの?」
喜美子の後から、俊夫が声をかけた。
「ええ、行ったわ。」
喜美子の言葉が終わらない内に、俊夫が喜美子の身体を背後から抱きしめ
た。
「だ~め~。」
「如何して?」
「如何しても・・、何で休むなんて言ったの? そんな事ひと言も言ってな
かったのに。」
喜美子が俊夫の腕の中で、身体をくねらせる様にして尋ねた。
「そんな事決まっているだろう?」
「もう、俊夫ったら・・。ダメ・・そんな事ばかりしていちゃ。」
俊夫の手が喜美子の乳房を、服の上から揉み始める。
「ダメだって言っているのに・・俊夫。さっきまでしていたのに・・。」
喜美子の声が弱くなった。
Tシャツを捲りあげ、その下のブラジャーを押しのけると、乳房を掻きだし
た。
指先で、そのグミの様に膨らんだ乳首を掴む。
「ダメ・・お母さん変になっちゃうわ・・。」
「変になってもいいよ・・僕が世話してあげるから・・。」
「俊夫・・、そんなに私としたいの?」
喜美子は、彼女の身体を弄る俊夫に訊く。
「ああ、ずっとしていたい・・。」
「判ったわ。私、夕べ一晩だけ、彼方のものになってあげるつもりだったの
よ。
でも、彼方が望むなら・・、もう一度だけ俊夫のものになってあげる。」
喜美子はそう言いながらも、本当のところ、自分自身が息子を求めているの
だと感じていた。
「これから直ぐ、彼方の処に行きましょう? 」
「僕の処に?」
「ええ、その方がお互いユックリ出来ると思うの、だから、そうさせて?」
俊夫にそれを断る理由は無い。
「ねえ、夕べ着ていたアレ・・持って行ってくれる?」
俊夫は、昨夜の喜美子のあの艶めかしいスタイルが脳裏に焼き付いていた。
「いいわよ、気にいってくれたのね。」
二人は急ぎ仕度をすると、追われる様にして家を出ると、俊夫のアパートに
向かった。
<影法師>
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