二人の間の築かれていた母子と言う名の高い塀が、瞬く間に崩れ去った。
今、二人に躊躇うものは無かった。
深夜6畳間の部屋で、一組の男女が肉欲の限界に挑んでいる。
初めて合わせた肌と肌、その温もりを互いが感じながら重なり合っていた。
喜美子は俊夫のペニスを、俊夫は母喜美子の濡れた蜜壺を愛し続けていた。
やがて、お互いがそれに満足すると、更なる深い繋がりに挑んだ。
俊夫の衰えを知らぬ肉棒が、濡れそぼる母を何度も貫く。
その度に喜美子の口から漏れ出る喘ぎ声は、心から彼を迎え入れる女そのも
のであった。
朝の光が、窓から差し込み、蒲団の端を照らしている。
蒲団は大きく乱れ、俊夫の上で喜美子の裸体が激しく乱舞している。
初めて喜美子が俊夫の上に跨り、その腰を艶めかしく使っている。
喜美子の下では、母の姿を見上げ、乳房を手で優しく揉む俊夫がいた。
二人の枕元には、使用済みのテッシュが無造作に放り出されていた。
残り少なくなった時間を惜しむ様に、二人は最後の愛の行為に入っていた。
今や、それを止める事は誰にも出来ない事で有った。
喜美子の切ない吐息と、時折漏れ出る喘ぎ声が、静かなその部屋に広がって
行った。
此処を訊ねて来てから、まだ時計の短針は一回りもしていない。
その僅かな時間の中で、喜美子の運命は大きく動いた。
その間に、喜美子は女として、その全てを俊夫に捧げていた。
出入り口の前で、二人は抱き合っていた。
「帰りたくない・・私。」
喜美子がそう呟く。
「僕だって、離したくないさ・・。」
お互い、その言葉だけが精一杯の気持の表現だった。
これ以上の気持ちを表す言葉は、二人とも思いつかなかった。
喜美子の俊夫を見つめる目は、すでに女の目だ。
俊夫も、自分の女の様に母を見ていた。
暫く抱き合っていた後、どちらともなく離れると、
「又必ず来るから・・。」
喜美子は俊夫の手を取ると、そう約束した。
「うん、待っている。」
俊夫はそれが何時の事か、そんな事をチラッと思いながら応えた。
禁断のカップルの朝の別れであった。
あの夜から1週間が過ぎていた。
喜美子は、今直ぐにでも、彼の元に向かいたい思いであった。
それをせずに居られたのも、一重にその息子俊夫を思う気持からであった。
僅かながらも時が過ぎ、喜美子にも、起きてしまった事の重大さが徐々に理
解出来ていた。
今ならまだ許されるかもしれない、あの夜だけの過ちで済ませられれ
ば・・。
それが、最愛の息子の為でもあるのだと・・。
そんな考えが僅かながらも、喜美子の行動を自制させていたのである。
しかし・・誰かが行っていた・・。
「女とは、子宮で物事を考える生き物だと・・・。」
時折ボーっとしている時がある。
その時は決まって俊夫の事を考えていた。
そして・・あの激しい一夜を。
何故か、身体が熱くなってくる。
思わず頭を激しく降り、その思いを打ち消す始末だ。
<これで良いのよ、これで良いの、あの子の為にも、私が耐えさえすれ
ば・・。>
そう自身に言い聞かせる喜美子であった。
帰り際の母の姿が俊夫には忘れられなかった。
もう二人が離ればなれになる事など絶対に出来ないと、お互いが感じていた
筈なのだ。
なのに、一週間が過ぎた今も、母からは何も言ってはこない。
俊夫には信じられない事だった。
あの時の母が言った言葉、
「もう離れられない・・。」
あの言葉は一体何だったのか、俊夫は母の気持が知りたかった。
母の前で冷静で居られるかどうか、自信は無かった。
だから、出来れば実家に行く事は避けたかった。
だが、今となってはそんな事は言ってはいられない。
直に母の気持を確かめ無い事には、何も手に付かない状態であった。
俊夫の訪問に、驚いたのは喜美子も同じだった。
逢いたいと思っていた人が、目の前にいる。
しかし、絶対に逢ってはいけない人でもあった。
「母さん・・・。」
「俊夫。」
二人は見つめたまま動かない。
「誰か来たのか?」
奥から父親の声で、二人は呪縛から解放されたが、
「入って・・。」
そう言うのが喜美子には精一杯の様に思えた。
俊夫が何か言いたそうなのを無視したまま、二人は父親の前に向かった。
「俊夫・・如何したのか心配していたぞ、その調子じゃ大丈夫そうだな。母
さんも心配してお前の処に行ったのだからな。母さんに礼を言っておけ。」
二人の事を何も知らない父親は、そんな見当違いに話をしている。
当の二人が、複雑な思いで見つめあっているのも知らずに。
、影法師>
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