「えと・・・・・・その、私、その、ユウ兄と・・・・・・」
凜は目を白黒させて、俺と、俺に抱き着き、肩で息をしているアリスとを見比べながら、どうしようかと迷っていたようだった。
その仕草がなんだか可愛くて、そしてちょっと面白かった。
「ふふふ、冗談だよ」
「へ?」
「お前まで近親相姦に巻き込みたくないよ。何より、俺は子供にまで守備範囲は届いてないから」
「なっ、ユウ兄ってば、ヒドイ!」
凜は顔を膨らませて、怒っていた。俺はそんな姿を笑いながら見ていた。
ようやく睡魔が働き始めたのだろう。凜はアリスの部屋に行ってしまった。
それを見た後、俺はアパートを飛び出して、汗だくになるまで走りつづけた。30分くらい走ると、冬のように寒い外だというのに、身体が燃えるように熱くなって、息も出来ないくらいに肺がキリキリと痛くなった。
「ああああああああっっ!! 畜生がっ!!」
自分に無性に腹が立った。
確かに最初は悪戯心で、凜の前でアリスと触れ合っていた。だが、そこで終わらせるつもりだった。
だがSEXしてしまった。
そればかりか、凜まで巻き込もうとしてしまった。
最低だ。
しばらくしてアパートに戻って、シャワーを浴びようとすると、既にアリスがシャワーを浴びていた。
「おかえり~、もうちょっとで上がるから待って~」
「うん・・・・・・」
ガラス戸越しにそう言われ、俺は素直にアリスの言うことに従った。
少しするとアリスがバスタオルをまとった姿でバスルームから出て来た。
「お先に~♪ あぁ、サッパリした」
「ん、先に寝てていいぞ・・・・・・」
「うん、そうする~」
俺はすぐにシャワーを浴びた。アリスが上がったあとのシャワーは、シャンプーの匂いか、なんだか甘ったるくて、心が揉みほぐされるような気がした。
そこで俺は少しだけ泣いてしまった。
理由はわからない。でもただただ涙が出て来て、止まらなかった。
ひとしきり泣いて、頭がスッキリしたのか、ちょっと気が楽になった。そのまま自分の部屋に行くと、アリスは既にベッドの上ですやすやと寝息を立てていた。
「・・・・・・ゴメンな」
寝る直前で俺は、アリスに謝っていた。絶対に聞こえていないはずなのに、それでも謝りたかった。
翌朝は別段、気まずいだとかそういうことも無く、映画に行ったりゲーセンに行ったりして普通に楽しんでいた。
そして、その日の夕方の電車で凜は帰っていった。
見送る直前に、俺はまたアリスと凜に謝っていた。
二人は気にしないと言っていた。
凜が帰っていったのを見て、俺は帰りながらアリスに話をした。
「本当にゴメン・・・・・・どうかしてた」
「もういいって。ホントに気にしてないし、ユウも反省してるでしょ?」
「うん・・・・・・でも」
「なに? じゃ、アタシとは別れるの?」
「そんなこと、するもんか!」
「じゃ、それでいいじゃない。少なくとも、凜は<知ってる>けど、<関わって>はいないでしょ?」
「・・・・・・うん」
そう言われて俺は少しだけ心が楽になった気がした。
その日の夜。俺はアリスと寝ることをためらった。
でも、正直な事を言うと、俺はアリスの事を<妹>としてではなく、一人の<女性>として好きだった。
だから俺はアリスと一緒にいることを選んだ。
「アリス・・・・・・俺のこと、好きか?」
「何をいきなり・・・・・・」
「答えてくれ」
「・・・・・・もちろん、好きだよ。愛してる」
そう言ってアリスは俺に抱き着いた。でもいつもの感じではなくて、優しく、まるで母親のように抱きしめられた。
「だから、安心して? アタシはずっと一緒にいるから・・・・・・」
それを聞いて、俺はまた涙がでた。
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