渋滞の中をゆっくりと進む。
細く長く伸びた一本道は、盆まっただ中ということもあってか、予想以上に込んでいた。
沿道には見渡す限り、路駐された車両の数々。
墓参に来た家族連れなどが所狭しと歩いているから、帰路の車と離合することも難しい。
うちの墓には、いつになったら辿り着けるのか。
軽くため息をつき、また、ルームミラーに目をやった。
「ああ・・・もっと・・もっと・・。」
後部座席では妻の葉子が、息子に跨りながら、妖しく腰をくねらせていた。
身体の線が、はっきりとわかるスーツは、短いスカートの裾がめくれ上がって、白い尻が丸出しになっていた。
分厚い手が、めり込むほどに、豊かな尻を鷲掴みにしている。
「ばあちゃんの墓参りにでも行くか?」
思いたったように息子が突然言い出したのは、今朝になってのことだった。
「ここしばらく行ってねえもんな。」
日頃は、引き籠もりで一歩も家から出ようとしないくせに、なぜか今日に限って、息子は家から出るつもりになったらしい。
幼い頃から、とても祖母を慕っていて、何かと言えばすぐに祖母のところに逃げ込んでいた息子だった。
ずいぶんと可愛がってもらっていただけに、ずっと気には掛けていたのかもしれない。
来年には成人をするが、まだ免許は持っておらず、妻も免許はないから、私が海外赴任していた4年間は、一度も墓参りに来ていないと言う。
つまり4年ぶりの墓参りというわけだ。
広大な霊園の中は、蜘蛛の巣のように幾本も細い道が張り巡らしてあり、それぞれの墓所へ車両で向かえる仕組みになっていた。
しかし、どこの道も混雑していて、霊園にたどり着いてからも、かれこれ30分以上もの間、車の中に閉じこめられている。
息子は、気怠げにシートにもたれかかり、妻は、あられもなく足を拡げて、息子の膝の上で悶え泣いていた。
ゆっくりと進む車のすぐ横を、花や供物を手にした人々が通り過ぎていく。
後部座席の横と後ろの窓には薄い遮光式のスモークが張られているから、ぱっと見ただけでは気付くことはないだろう。
だが、よく見れば、中で何をしているのかすぐにわかるはずだ。
実際、驚いた顔で私の車を指差していた人たちが、何人かいたことにも気付いていた。
「ああ・・もう、我慢できません・・。いかせてください・・・。お願いです。お情けをください・・・。」
後ろで、妻が切なげな声で訴えた。
途端に尻をぴしゃりと叩かれ、また無言のままに、妖しく腰をくねらせていく。
家を出てから、すぐにオモチャにされ、霊園に入った頃に跨ってからは、ここに来るまで、ずっと入れたままだった。
恐ろしく長くて太い物が、豊かな白い谷間の奥で濡れ光っていた。
あんな物を30分以上も押し込まれているのだから、堪えられるわけがない。
息子も無言のままだった。
妻などまるで目に入っていないかのように横を向き、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
目が隠れるほどに前髪を伸ばし、無精ひげを生やした容貌には、およそ精気というものが感じられない。
ずっと無言でいるのが不気味でならなかった。
「ああっ!!いいっ!!・・・気持ちいいっ!!・・・。」
とうとう我慢できなくなったのか、妻が狂ったようになって、激しく尻を上下させていく。
もはや、彼女には沿道の人々など見えてはいない。
ただ、ひたすら昇りつめようとしているだけだった。
車体が大きく上下した。
頼むから、もう少し静かにやってくれ!
冷や汗を搔きながら、祈るような気持ちでハンドルを握り続けた。
ようやく墓所にたどり着いたのは、それからさらに30分も経ってからだった。
妻は、クーラーの効いた車の中でさえ、頬に髪を張り付かせるほど、ねばい汗を顔中に浮かべていた。
「着いたみてえだぞ・・・。」
沿道に車を止めて、エンジンを切ると、ようやく息子が口を開いた。
おもむろに身を乗り出すと、膝の上に乗っていた妻の小さな頭を掴んで、貪るように唇を吸い出した。
はあはあ、と妻の荒い息が聞こえ、二人は躍るように舌を絡ませていく。
「ふふふふ・・・。」
ようやく唇を離した二人は、見つめ合って、なぜか、ほくそ笑むように笑っていた。
いっこうに降りようとする気配のない二人を残し、私は、助手席に置いた供物の果物と線香、それに途中で買った花を抱えると、車を降りた。
昼過ぎに家を出たものの、思わぬ渋滞に引っ掛かり、墓の前に立ったときには、すでに空が紅く染まるほどに日は暮れかけていた。
墓所の中でも外れた位置にあるせいか、墓参に訪れた人たちの姿もすっかり少なくなって、立ち並ぶ墓石の間に、ちらほらと頭の影が見えるだけだった。
4年間も来ていなかったわりには、墓は綺麗に手入れされていた。
それだけの檀家料を払っているのだから、それくらいはしてもらわなければ困る。
供物を置き、線香を立てて、手を合わせた。
こんな不甲斐ない息子を、きっと両親は草葉の陰から嘆いていることだろう。
特に私を溺愛してくれた母は、悔やんでも悔やみきれないほどに後悔しているに違いない。
まだ若かすぎるほどに若かった妻との結婚を、最後まで反対していたのは、母だった。
墓に水をやるために、杓と桶を探しに行こうとした。
ふと、人影を感じて振り返ると、背後に妻と息子が立っていた。
すっかり身支度を調えた妻は、首にいつもの赤い首輪を巻き付けていた。
首輪から伸びた鎖の端は、ニヤニヤと笑う息子が握っている。
おいおい・・・。
何もこんなところに来てまで、することはないだろう?
少なくなったとはいえ、まだ、墓参りの家族はいるのだ。
「お水?」
不意に妻に訊ねられて、「あ、ああ。」と答えた。
「そう・・。」
妻は、不敵な笑みを浮かべると、私の隣りに立った。
どん、と肘で私の腹を突き、邪魔なものでもどかすように、私を押し退けた。
感慨深げに墓石を眺め、くくっ、と笑った彼女は、「お義母さま、ずっと来れなくてごめんなさいね・・・。さぞや、喉が渇いていたことでしょう?・・・。これから、たっぷりとお水を差し上げますね。」と言い、そして、その場に四つん這いになっていった。
訳がわからずに、唖然と眺めていると、墓石に対して、身体を横に向けた彼女は、犬が小便をするように、片足を高々と持ち上げた。
下着は着けていなかった。
短いスカートがめくれ上がり、白い尻が丸出しになった。
「さあ、好きなだけ飲んでください・・。」
冷ややかな笑みさえ浮かべていた。
股に手を入れて、自分の指で開いていった。
ビシャビシャと、派手に水の跳ねる音がして、墓石に黒い染みが拡がっていったのは、すぐだった。
「あはははは!」
犬のような姿で小便を噴き出しながら、妻は、狂ったように笑っていた。
「な、なにをっ・・!?」
驚いて、すぐにやめさせようとしたが、その時には、後ろから羽交い締めにされていた。
「黙って、見ておけよ・・。」
暗い陰鬱な声に、途端に足が竦んだ。
「お、お前たち、いったい何をしているっ!?」
恐怖はあった。
だが、あまりに無体な仕打ちに、黙っていることなどできなかった。
先祖の墓に小便を掛けるなど、想像もできない。
たとえ何があろうと、あってはならないことだ。
「勘弁してやれよ。今までの恨みを晴らしてるだけだ。特にあいつは、あのババアに恨みがあるからな。積年の恨みを晴らしてるだけさ。」
まるで他人事のような口調だった。
妻が、事あるごとに母から苛められていたのは知っていた。
だが、嫁姑の関係など、どこの家庭にだってあることだ。
こんな無体な仕打ちをすることではない。
「お、お前は平気なのか!?お前だって可愛がってもらっていただろう!?ばあちゃんには、ずっと可愛がってもらっていたんじゃないのか!?それを、あんな事をさせるなんて、いったいどういうつもりだっ!?」
身長は、とうに私などより、はるかに大きくなっていた。
とても力ではかないそうになかった。
必死に藻掻いたが、背中に腕をねじ曲げられ、首に回した腕はぴくりとも動かなかった。
「可愛がってもらっていた?俺がか?あのババアに何をされていたのか知らないのかよ?ふん・・。知るわけもないか・・・。」
吐き捨てるような言いぐさだった。
「知らないって、何がだ!?いったい、おばあちゃんがお前に何をしたって言うんだ!?」
「お前、あのババアと、出来てたんだって?」
突然、耳元で囁かれて、ハッとなった。
「な、なんのことだ?・・」
一瞬、心臓が凍りついた。
あれは、永遠に葬られた秘密のはずだ。
あの秘密を知るものは、もうこの世にはいない。
その秘密を知る人は、目の前の墓の下に眠っている。
だから、誰も知るはずがないのだ。
「お前が、この女に夢中になって、ババアの相手をしなくなったから、俺が代わりをさせられたんだ。ケツの穴に指まで入れられてな。俺が喜んでババアの所に行ってたとでも思うのか?行かなきゃ、ババアに折檻されたから、仕方なく行ってたんだ。おかげで、暗い青春時代を送らせてもらったよ。親父が色狂いの変態だなんてわかったときには、どれだけ悲しかったと思う?」
そう言いながらも、息子は後ろで、せせら笑っているようだった。
「この女もババアには、色々とされたからな。俺が悪戯されてたのも知ってたぜ。知ってて、見逃してたんだ。ババアを恐れて、俺を見殺しにしたわけだ。」
妻の放尿は止まりかけていた。
声も聞こえていたはずだ。
「もっとも、こいつはちゃんと反省して、俺の奴隷になることを誓った。今じゃ、ちゃんと俺を愉しませてもくれる。さあ・・お前は、どんな償いを、俺にしてくれる?」
首に回された腕に力が込められた。
喉に食い込んで、息をすることさえも辛くなった。
「つ、つぐない・・・だと?」
「ああ、俺をあの色狂いババアの生け贄にした罪の償いだ。息子のお前が、精算するのは当たり前だろう?」
「い、いったい、なにを・・・・。」
シラを切ろうと思った。
証拠がある訳じゃない。
息子が、母の玩具にされていたのは事実なのかもしれない。
だが、まだ私と母の秘密の証拠を、こいつ等が握っているとは思えなかった。
「何を・・・言ってるんだ・・・。」
あくまでシラを切り通すつもりだった。
「白状しちゃいなさいよ。変態息子さん。あんたのお母さんが私に言ったのよ。あんたは、私より、お母さんの方が好きなんだって。今でもたまに、可愛がってくれるんだってね。この耳で、ちゃんと聞いたわ。今、思い出しても、吐き気がするわよ。あんなババアとやってたなんて。その手で私にも触ってたんでしょ?」
「し、知らん!お前の言っていることなど、デタラメだ!」
途端に、首を締めつける腕の力が、さらに増した。
「しょうがねえ野郎だ。証拠がねえからシラを切り通せるとでも思ってんだろ?生憎だったな。ちゃんと証拠はあるんだよ。あのババアの日記と、それに挟んであったお前の写真だ。裸でババアとお前が仲良く写ってる写真があるんだよ。日記にも、お前が中学の頃から、あのババアに突っ込んでたのが、延々と書いてあるぜ。うちに帰ったら、見せてやるよ。しっかり証拠は揃ってんだ。逃げ出す道なんて、お前にはねえぞ・・・。」
ひざがガクガクと震えた。
自分の足で、立っていることさえままならなかった。
奴が首を押さえていなかったら、すぐにでも、その場に頽れていたかもしれない。
確かに、まだ子供でしかなかった頃に、一緒に何度も写真を撮った記憶がある。
母が、記念に欲しがったのだ。
「どうやら、思いだしたみてえだな・・・。」
唇は震えだして、息子にもわかったようだった。
もはや、言い逃れのしようもなかった。
写真まで見つけられてしまったのでは、言い逃れなど出来ようはずがない。
「さあ、どんな落とし前をつける?」
畳み込むように、息子が聞いてきた。
「そ、そんなことを・・・言われても・・・。」
妻を奪われ、過去の秘密まで暴露され、これ以上私に、何を差し出せと言うのだ。
「妹をつくれ。」
唐突に、奴が耳元で囁いた。
「い、いもうと・・・?」
「ああ、妹だ。可愛い妹を俺につくれ。こいつも承知している。俺のために妹をつくって、奴隷にするために育てるってな。」
背筋を、冷たいものが走り抜けていった。
まさか、それを本気でやろうとしているのか?
すべてを言わなくても、すぐにわかった。
いくら注ぎ込んでも、妻は息子の子供を身籠もらない。
ならば、私の種を代わりにする。
「薄汚いお前のチンポなんて、見るのもごめんだけど、ご主人様がお望みだから仕方ないわ。その代わり、絶対に女の子をつくるのよ。何が何でも、女の子を植え付けるのよ。」
真顔で言っている妻の顔に、躊躇いや憂いは微塵も見られなかった。
本気で、こいつも息子の玩具にするために、俺にもうひとり子供をつくらせようとしている。
「帰ったら、早速やらせてあげる。でも、勘違いしちゃだめよ。お前は、ご主人様の奴隷2号をつくるための道具なんだからね。気持ちよくさせるために、させるんじゃないんだから、すぐに出すのよ。いいわね。」
睨みながら近づいてきた妻は、縮み上がった下腹部をいきなり握りしめた。
「粗末なチンポね。少しご主人様に、鍛えてもらいなさい。」
そう言った妻は、にやりと唇の端を吊り上げると、酷薄な笑みを浮かべていった。
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