「あの、朝霧先輩って本当に優しいんですね。誰にでも平等で……」
翔は蓮の隣で歩きながら、しきりに話し掛けた。その口調は明るく、しかしどこか探るような雰囲気がある。その心情を見透かすように、蓮が口を開いた。
「僕は優しい人間じゃないよ」
「……え?」
翔は思わず蓮の方へ視線を向ける。その表情からは感情は読み取れず、ただ静かな微笑を浮かべているだけだ。
そんな二人の間を風が通り抜け、木々がざわざわと揺れた。その一瞬、蓮の瞳に深い闇が見えた気がして、翔は息を呑む。
「君は……面白い子だね」
蓮はそう呟くと再び歩き出した。翔はその後ろ姿を呆然と見つめることしかできなかったのだった。
「……あ、あの!朝霧先輩ってどんな人がタイプですか?」
沈黙に耐えかねた翔は、慌てて口を開いた。しかし蓮は表情を変えず、前を向いたままだ。
「タイプ?……さあ、考えたこともないな」
「……じゃあ、今までの彼女はどんな人ですか?」
翔は食い下がるように問いかける。その必死な様子に、蓮は小さく笑いを漏らすと口を開いた。
「別に……普通だよ」
それだけ言うと、再び黙り込んでしまう。翔はそれ以上何も言えず、ただ黙って隣を歩き続けたのだった。
蓮が何を考えているのかわからず、翔は困惑していた。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
「朝霧先輩って、本当に完璧ですよね」
翔は再び口を開いた。その言葉に、蓮は興味を惹かれたように視線を向ける。その反応を見て翔はさらに言葉を続けた。
「勉強もできてスポーツもできて……非の打ち所がないって感じです」
蓮は黙ったまま聞いている。その表情からは何を考えているのか読み取れないが、少なくとも不快に感じている様子はなかった。
「でも……なんか完璧すぎて逆に怖いっていうか……」
翔の言葉に蓮は小さく息をつくと、静かに口を開いた。
「君は……僕のことが知りたいのかな?」
蓮の言葉に翔は思わずドキッとする。全てを見透かすような眼差しに射抜かれて、言葉を発することができなかった。しかし次の瞬間にはいつもの穏やかな笑顔に戻っていた。
「……なんてね」
そう言って微笑む姿はやはり完璧で、翔は何も言えずに立ち尽くしたまま蓮を見つめていたのだった。
翔は憧れ以上の性的な魅力を感じてしまっている自分に気づき始めていた。
「俺、朝霧先輩のことが好きです!」
翔は意を決して告白した。蓮は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの優しい笑顔に戻る。そして静かに口を開いた。
「……君は、本当に面白い子だね」
「俺……本気なんです!付き合ってください!」
翔の勢いに押されたのか、蓮は少し困ったような表情を浮かべた。しかしすぐにいつもの穏やかな笑顔に戻ると、ゆっくりと口を開く。
「じゃあこれから少し付き合ってくれるかな。」蓮はそう言って歩き出す。翔は戸惑いながらも、その後について行った。
「あの……どこに行くんですか?」
「僕の家だよ」
蓮の言葉に、翔はさらに困惑してしまう。しかし蓮は構わず続けた。
「……君に興味があるんだ。もっと知りたいと思ってね」
そう言って微笑む姿はやはり完璧で、翔は何も言えずに立ち尽くすしかなかったのだ。そして二人はそのまま蓮の家へと向かったのだった。
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