男の体温と息遣いを感じ、男の汗混じりの体臭を鼻から吸い込む。ペニスの半分ほどしか挿入が叶わない体位の為に、Gスポットを強かに刺激される快感が束の間、時間の感覚を忘れさせる。
片膝を持ちながらの行為が辛いのか、男の腰の勢いが急速に弱まって冴子が我を取り戻す。焦燥感と羞恥心に戸惑う冴子の脚を下ろした男は、黒いブラウスのボタンを素早く閉じてやり、彼女の身体を窓側に向き直させる。冴子にしてみれば座席の人に見られていたのではないかという懸念が、都合良くまだ居眠りをしてくれていたことに、胸を撫で下ろしたこどだろう。実際には狸寝入りをしているに過ぎないのだけれど………。
男の行為はこれで終わる筈はなく、スカートの後ろ側を持ち上げられる絶望的な感触を覚えた冴子は俯くしことしか出来なかった。慌てふためく事で、周囲の人の注目を集めるわけにはいかないのだから。
男にショーツをお尻の下まで下げられ、腰を落として位置を合わせてあてがったペニスを沈めてくる。固く瞼を閉じて堪え忍び、必死に平静を装いながら右手に掴むポールを強く握りしめた。左手で腰を後ろに引き寄せられて、やや後ろに腰を引いた格好の冴子は出来るだけ不自然に見えないような姿勢を保とうと、背筋を伸ばす。
渋滞が始まったのかバスが少し進んだと思えばすぐに停止することを繰り返し、いたずらに時間を長く感じ感じさせる。後ろから挿入された事で先程よりも明らかに奥まで届き、ストロークの短いピストンが静かに繰り返され始めていた。
緊張感が伴うこの状況で休むことなく続けられ、またも思考能力が奪われていく。冴子の口から単なる溜息とは違う吐息が漏れ出し、後ろ手で男の腰を押しやる抵抗を度々して見せる。けれど男は意に返した様子もなく腰の躍動を止めはしない。
両手でポールを抱えるようにしてどうにか立ち続ける冴子は、自分との戦いの最中にいた。
こんな所で崩れ落ちでもすれば、醜態を晒すことになる。恥ずかしい姿を見られることだけは耐え難く、今を死守しなければと必死に平静を装う。
けれどその顔は目が座りながら一点を見詰め続けて、表情までもなくなってしまっている。
甘く切ない快感を注がれ続け、立っているのがやっとの状態を持続させられる。体温が上がり冷房の効いた車内で汗ばんだ女の身体が匂い立ち、俯いては跳ね上がる頭だけが忙しなく動く。
座り込みたいのに腰を拘束されてそれも叶わず、石油の掘削作業のように男の腰が躍動をし続けていく。不意に冴子の身体が硬直し、ビクッ…!……ビクビクッ……!っと弾ませたかと思うと、男の腕に支えられながら弛緩してしまった。
ペニスを呑み込んだままの膣壁が何度も不規則な収縮を繰り返し、オーガズムを迎えたことを知った。冴子は完全に体重を後ろの男に預け、恍惚の最中にいた。
そして再び男の腰が活動を再開され、冴子の身体が静かに揺れ始める。冴子はもう自分が立っているのがどうかさえ分からなくなり、ただペニスの魔力に酔わされ、その甘さを享受することにただ執着することに忙しかった。
利き手の右手はポールを掴み、空いた左手で後ろの男の腰の辺りを掴み、拒絶という概念を忘れたようにペニスを受け入れ続けていく。不意に男の息遣いが怪しくなり、冴子が危機感を抱いた時にはもう遅かった。
男がペニスを引き抜いた後から何かが流れ出るのが分かり、冴子の頭の中が真っ白になる…………。
まさか、まさかそんな…………………。
座り込みそうになる冴子は、三度後ろから挿入される感触を覚え、事態を把握する暇もなく勢いのあるピストン運動に気持ちが寸断されていた。
敏感になっていた身体が即座に反応を示し、次のオーガズムへと階段を昇り始めていく。道徳心も自尊心も置き去りにして、ただ快感を貪る冴子の中の女が目を覚ます。
冴子はもう、音楽教師ではなくなっていた……。
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