「策略の連鎖」
貴明は、西原と優樹の交際が順調に進んでいるという知らせに、安堵しながらも、まだ安心しきれないでいた。
(このまま、靖と優樹がどうにかなるのを待つだけじゃいけない。万が一、靖が再び、友花と付き合うようなことになったら、元も子もない…)
念には念を入れ、貴明はもう片方、藤原友花にも手を打つことにした。再び、友人を巻き込むことにしたのだ。
今回のターゲットは、友花の同級生で、生物部の後輩である倉柳直仁。倉柳は以前から、友花に好意を寄せていることをよく話していた。
ある日の放課後、貴明は倉柳を呼び出した。
「お前、クラスメイトの藤原のこと好きか?」
貴明の唐突な質問に、倉柳は戸惑ったように目を泳がせる。
「…えっと、まあ……」
「今なら付き合えるかもしれねえぞ」
貴明はそう言って、友花と西原が別れたことを告げた。倉柳は驚きながらも、貴明の提案に乗った。友花に告白し、ふたりはあっけなく付き合い始めた。
貴明は、これで完璧だと確信した。西原は優樹と、友花は倉柳と付き合い、もう二度と二人が関わることはないだろう。
しかし、貴明の心には、友人たちを自分の都合のために利用したことへの罪悪感が、じわじわと広がり始めていた。そして、この複雑に絡み合った人間関係が、果たして自分の望む結末へと向かうのか、貴明にはまだ知る由もなかった。
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