目覚まし時計のアラームが鳴る前に目が覚めた。
いつもの朝と同じく体の柔軟をする。猫のように背中を反らせて十分に伸ばし、次に腕を伸ばしてからベッドを出る。
昨日は帰宅してからも食欲は沸かず、お風呂にも入らないで寝てしまっていた。
同じ朝なのに、見慣れない下着を身につけている。
昨日の悪夢が蘇りそうになって身構える。すがるように彼の笑顔を思い出したら嘘のように霧が晴れるから不思議だ。やっぱり彼は私のビタミン剤らしい。
着ているものを脱ぎ捨てて暑いシャワーを頭から浴びる。
無意識に体のチェックをしてしまう。
二の腕、お腹、脇腹、乳房、お尻、太腿………たぶん2〜3キロ太っている。見た目には変わらなくても手が微妙な変化を感じとる。
………嫌だわ、気おつけないと……
自分を戒める。
乳房もお尻も、太腿だって若い頃に比べたら多少の変化を感じるが、それでも同年代の女性に比べたら負けてない自信がある。肌だって毎日のお手入れが結果を見せている。
こんなに頑張って誰に見せるというのだろうか、それは………考えることを止めてボディシャンプーを体に塗り拡げる。
乳房に触れた。昨日の行為で鷲掴みにされたことが思い出される。
苦痛を感じる前に手の力を抜いて、ソフトに揉む手つきに変わったのだ。
思いを振り払う。
お尻から太腿、そして下腹部………ソコに触れるとあの強烈な快感がフラッシュバックした。
彼を思い出す。理性が保たれて恐怖心を溶かしてくれるから不思議だ。
こんなことに彼を使って申し訳ない気持ちになるが、甘い余韻となって消えていく。
泡を洗い流してバスタオルに身を包んだ。
化粧水をたっぷりと肌に吸収させ、乳液で蓋をする。
体にはベビーオイルを薄く伸ばしてスキンケアを終えた。
冷蔵庫からミネラルウォーターを出して、喉に流す。やっと体が覚醒した気がした。
トーストとコーヒー、ヨーグルトの簡単な朝食をお腹に入れて玄関を出た。
電車に乗る前に身構える気持ちがあったのも事実。乗ってしまえばいつもと変わらない通勤電車なのだった。
先方への電話、足を運んで小一時間を過ごして次の目的地を済ませると、もう午後1時半を過ぎていた。今いる場所からは遠いのは分かっている。
それでも胸の高鳴りは止まらない。
50分をかけてカフェの建物が見えてきた頃には午後3時前になっていた。
彼は私の姿を認めると、驚いた顔をして出迎えてくれた。
男性店員「あれ……いらっしゃいませ。今日は遅いんですね」
修は由希子の姿を認めると、内心の動揺を隠せなかった。昨日の今日だったから。
今日はパンツスーツなのは、やっぱり昨日の事があるからだろうかと心が痛む。
何故かこちらの顔を見てホッとしたような表情をして、あの素敵な笑顔を見せてくれた。
少し疲れて見えたのは木のせいだろうか。
パンケーキしか食べるものを注文しない彼女に、勝手にフルーツを加えて出した。
疲れた顔をしてるから奢りだというと、満面の笑みでお腹に収める由希子に少しホッとする。
コーヒーを飲み終えた由希子は「ごちそうさま」そう言い残して軽やかに去って行った。
ホッとしたら昨日のことを思い出して、股間が硬くなるのを自覚する。
由希子を抱きたいと思った。
切にそう思った。
何故か彼は心配そうな顔をしていた。
そんなに疲れた顔をしていたんだろうかと、自分の顔を触ってみるが、さっぱり分からない。
そんなことよりも、笑顔を添えてフルーツをご馳走してくれるなんて、嬉しかった。
正直あまり食欲はなかったのに、ぺろっと食べられたから不思議なのだ。これで午後の仕事を頑張れる。
元気になった気がする。漲る気力をバネに椅子から腰をあげると彼に……ごちそうさま………そう伝えてカフェを後にした。
彼に触れたい、そう思った。
あの頼りがいのありそうな体に。
勇気を出して映画にでも誘ったら来てくれるだろうか。
事前に映画館の下見にでも行ったほうがいいかしら………
気持ちを弾ませながら、駅に向う歩を早めた。
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