~彼の秘密と私の秘密⑥~
ふと目が覚めると、もう外は明るかった。ちゃんとベッドに寝ていたようだが、昨夜遅くにソファから起きてシャワーを浴びてから眠った記憶がある。いつもの起床時間よりまだ早かったのでもう一度昨夜の幸せな気持ちを回想してから起きた。昨日と同じ時間に会社に入ると昨日と同じタイミングで赤城君に会う。話しかける時に一瞬脳裏に昨夜の妄想が浮かんでドキドキした。
私:おはよう。昨日も残業お疲れさんだね。
赤城:やっと金曜日なんで今日は定時です。
赤城:ところで、ちょっと相談あるんですけど、18時過ぎに8階に来てくれませんか?
急な展開に戸惑ったが、少し考えてから、
私:少しなら大丈夫だけど、ちょっと約束あるから…
赤城:そんなに大した事じゃないので少しの時間で大丈夫です。
仕方なく了解した雰囲気を出しつつも内心は、かなりドキドキしていた。もちろん日中の業務はあまり手につかずフワフワとしたまま終業時間になった。赤城君が鞄を持って帰りのエレベーターホールに向かう。ワンテンポ遅らせてから私も席を立った。金曜日は基本的にノー残業デーなので18時過ぎといえど殆どの人が帰りに向かったので8階はシーンとしていた。
赤城:あ、こっちです。
赤城君は屋上への鉄扉の前で待っていた。そしてそのまま屋上へ一緒に上がるように促された。
私:これが屋上への階段なんだ。
赤城:昼休みとかは結構人がいますよ。
初めて来たみたいな空気を作りながら、屋上へ出る。そのままテニスコートの角を抜けてコンテナの裏に連れてこられた。心音が聞こえそうなぐらい鼓動が高まっていた。
私:相談てどんな事?
赤城:覗いてだろ…
私:えっ?
急に壁ドンの態勢で退路を断たれて上に、怒気をはらんだ声で凄まれた。大げさに戸惑いの反応をしてごまかそうとしたが、何のことかはよくわかっていた。
赤城:俺はなッ!俺をこき使うこの巨大な会社へ、お前らの駒じゃないぞって屋上からぶっかけてんだよ!
私の耳元で怒鳴っている。私は思わず手で塞ごうとしたが手首と顎を強く掴まれ強烈に睨みつけられた。もう恐怖で震えていた。
赤城:しかもお前、盗んだだろっ!
顔面蒼白になって硬直する。蛇に睨まれた蛙になった気分で震えながら
私:ご、ごめんなさぃ…
ほとんど聞こえないような小声だった。さっきまで抱いていた優しい赤城君の幻想や甘い時間の妄想は微塵もなくなり、ただただ恐怖に晒されていた。
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