肩書が会社員となって数か月、夏は過ぎたけどまだ強い日差しが残る季節
ある程度の仕事はできるようになったけど、まだまだ半人前で心が忙しい日々を過ごしている
「ただいま」
「おかえり、今日は早かったのね」
「うん、着替えてくる」
あの日から母さんは俺の部屋に抱かれに来ることは無くなった 今でもばあちゃんを拒み続けてるのかもしれない
母さんと最後にセックスしたのはもう何か月も前の事で、そのことを話し合ったことはない
母さんからセックスについての話がなかったので俺からもしなかった
それが良かったのか母さんはじいちゃんに抱かれる前の母さんに戻った気がする
朝は自分で起きているから体を揺すられることはないけど
ふとした瞬間に軽く肩をたたいてくれたり背中に手を当ててくれたり 母さんの温かい手が戻ってきた
それに今日はスカートをはいていた これが普通の母子だ、これでいい
あのとき有り余る性欲に負けてしまった自分のことを情けなく思う
母さんは以前の母さんに戻ったけど、母さんを見る俺の目は少し変わった
俺の中で口うるさい母さんから口うるさい綺麗な母さんに昇格したのだ
「ただいま」
親父が帰ってきた 大企業の部長さんだ
「おかえりなさい、ご飯はもう少し待ってね」
親父が勤める先の規模は知っていたけど、その影響力というのは会社に勤めだして初めて実感した
俺が入った会社は小さくはないけど大企業と呼ばれている親父の会社と比べれば大したことはない
その親父が赴任先から帰ってきて部長という役職にに昇進した うちの会社には関係ない部署だけどね
「どうだ、仕事には慣れたか」
「うん、慣れてる途中かな」
「そうか、明日は休めるのか?」
「うん」
これがこの日の親父との会話の全部
あとは朝とか寝る前とかの挨拶や相槌みたいなことはあるけど、その他はこれといった会話はない
俺が二階の部屋に向かうとき、親父と母さんは並んでテレビを見ていた
二人は高校からの付き合いだと聞いたことがある
今は四十七歳同士の夫婦で二人の仲は悪くない、休みの日は二人で出かけたりもしている
そういえば、じいちゃんが二人はセックスレスみたいなこと言ってたな
親父、たまには母さんを抱いてやれよ
ちょっと上から目線で二人にエールを送り階段を上がった
〈よお、タカシ 元気にしとったか〉
『じいちゃん!成仏したんじゃなかったのかよ!』
〈バカいえ ナオミちゃんと添い寝したぐらいで成仏できるか〉
『ばあちゃん死んじゃったから成仏できなくなったのか?』
〈まあ、そんなところだ それよりな、お前の嫁を見つけてきたぞ〉
『は?なに言ってんだ』
〈覚えてるか?高校三年のとき同じクラスで勉強のできる女の子 なんて名前だったかのう〉
『だれ?半分以上は俺より成績良かったけど』
〈生徒会とかやってた女の子がおっただろ〉
『んー サクラさん?』
〈おお、そうだそうだ サクラ アンナだ〉
『フルネーム知ってるのかよ 知らないフリしてただろ』
〈わしが全部教えるより自分で思い出すということは大事だぞ〉
『それでサクラさんが俺の嫁って意味わからないんだけど・・・ あんまり喋ったことなかったし』
〈明日会ってみるか?〉
『明日は家でゆっくりしたいんだけど』
〈おまえな、休みの日は家でごろごろしとるか男友達と遊んどるだけだろ もっと女を求めて街に出ろ〉
『いや、なんか今は彼女とかいらない感じだし・・・ ってか見てたのかよ・・・』
〈そうか それなら仕方ないのう・・・〉
『用は済んだ?もう寝るけど』
〈ああ、そうだ 明日ちょいと体を貸してくれ〉
『ええ・・・ なんで・・・』
〈久しぶりに肉を食ってみたくなったんだ おまえの若い体なら好きなだけ食えるだろ〉
『ああ、そういうことね でも、俺の金で食うんだよな・・・』
〈ケチケチするな、気前よく金を出せ おまえも肉を味わうことができるんだぞ〉
『じゃあ、焼き肉の食べ放題コースとかならいいよ』
〈よしよし、決まりだな〉
翌日、母さんに晩御飯はいらないと伝えて家を出た
じいちゃんに体を譲って30分後、目の前に見覚えのある女性が現れた
俺の記憶の中では学生服を着ていた彼女だったけど少し大人っぽくなっている
『じいちゃん・・・ サクラさんなんだけど・・・』
〈ほう、これは偶然じゃな〉
『偶然じゃないだろ!』
「タカシちゃん、久しぶりね」
『は?タカシちゃん?そんな仲良くなかっただろ・・・』
「意識はあるんでしょ、歩きながら話しましょうか」
『ばあちゃんだよな・・・』
「この娘はね、ずっとタカシちゃんの事が好きだったそうよ」
『へー そうなんだ』
〈気づかんかったとは鈍いのう〉
『言ってくれなきゃわからないよ・・・』
「それでね、仲を取り持つ約束をしたの」
『まぁ、話しするぐらいならいいけど じいちゃん、ばあちゃんに言って』
〈わかった〉
「ナオミちゃん、タカシは了解してくれたぞ」
「あら、そうなの ありがとうね、タカシちゃん」
俺の記憶にあるサクラさんは学年の中でも上位の成績で、俺から見たイメージは優等生タイプ
休み時間とかは二人か三人の女子と話してた 以上
一緒に遊んだり仲良く話したりしなかったし、至って普通のクラスメート
勉強ができる以外は良くもなく悪くもなく印象が薄い
それにしても意外だったな、サクラさんが俺の事好きだったなんて
でも、俺も高校の時は好きな娘がいたからな 片思いのまま終わったけど・・・
「ナオミちゃん、ここにするか」
「そうですね」
『は?ここってラブホテルだろ!おい!じいちゃん!』
「好きな部屋を選んでいいぞ この一番高い部屋とかどうだ?」
「あら、よさそうですね」
『それ俺の金だ!』
初めてラブホテルに入った 部屋はピンクの照明が点いてるのかと思ってたけど普通に明るかった
当然の事だけどベッドがある そして俺は緊張している
期待からくる緊張ではなく不安からくる緊張だ
体は俺とサクラさんだけど中身はじいちゃんとばあちゃん 特にばあちゃんがヤバイ
浴室の方から水が落ちるような音が聞こえてきてサクラさんが出てきた
「お湯が張れるまで少し待ちましょうか」
「そうだな」
『じいちゃん、とりあえずここ出ようよ』
〈何を言っとる、入ったばかりだろ〉
『でもさあ・・・』
「ノブヒロさん」
サクラさんがベッドの上で手招きしていて、じいちゃんはベッドに上がった
二人の間に言葉が無いまま抱き合いキスをして舌を絡め合う
俺は初めて母さん以外の女性の抱き心地を感じ絡め合う舌を味わった
多分サクラさんも意識あるんだよな
ごめん、サクラさん・・・
なんでばあちゃんに体を貸しちゃったんだよ・・・
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