その夜、俺の体は部屋を出た 母さんが眠る両親の寝室には向かわず階段に向かう
それだけでじいちゃんが向かう先が分かってしまった
階段を下りると引き戸の部屋の前に立つ 一階にある和室、ばあちゃんの部屋だ
「ナオミちゃん入るぞ」
返事は無い、ばあちゃんは眠っているのだろうか
引き戸を開け明かりが落ちた部屋の中に入ると足の裏には畳の感触を感じ鼻からばあちゃんの香りが入ってくる
「ナオミちゃん わしだ、ナオミちゃん」
「ん・・・」
「ナオミちゃん」
「んん・・・ ああ・・・ タカシちゃん どうしたの?」
「わしだ、明かりを点けてもいいか」
「なにかあったの?」
部屋の明かりを点けたじいちゃんは体を起こしたばあちゃんの前に座った
「こんな遅くにどうしたの?」
「わしだ わからんか?」
「タカシちゃん?」
じいちゃんは手を伸ばしてばあちゃんの頬に指先を当て優しく撫で始める
最初は驚いた様子だったばあちゃんだけど、じいちゃんの指先が耳を撫で始めると表情が緩んだ
「あぁ、そんなはずないわ でも これはノブヒロさんの指使い」
「そうだ、わしだ ノブヒロだ」
「ノブヒロさん」
「ナオミちゃん」
どう表現すればいいのだろうか、目の前の女性は確かにばあちゃんなのだけど
まるで少女のような愛らしい笑顔をこちらに向けている
「ナオミちゃん、会いに来たぞ ナオミちゃんを抱くために戻ってきたぞ」
「それはダメですよ そんなことできません」
「え?」
『ええ!?なんで!いい雰囲気だっただろ!』
二人の事を静観しようと思ってたけど思わず心の中で叫んでしまった
「なぜじゃ!?」
「だってタカシちゃんの体ですもの 抱かれるわけにはいきません」
「ナオミちゃん、そんな事言わずに・・・」
「だめです」
「そこを何とか タカシの体だが目をつむっとけば分からんだろ」
「あまりしつこいと怒りますよ」
「すまん・・・」
じいちゃんはフラれたが添い寝だけは許してもらえた
「すまんかったな」
「ええ、本当に 急でしたからね」
「わしも醤油を買いに出てそのまま死ぬとは思わんかったからな 寂しい思いをさせてしまった」
「ほんとうですよ、セーラー服と人外ディルドが届いて楽しみにしてた矢先でしたものね」
「ああ、そうだったな・・・」
『二人とも・・・ いい年して何やってるんだよ・・・』
〈黙っとれ・・・〉
「でもね、ヨシダさんが慰めてくださったの 色々と」
「なんだと?ゲンジロウのやつが?」
「ゲンジロウさんの息子さんよ 四十九日の法要が終わった夜に訪ねて来られてその日のうちに それから1年ほど慰めていただきました」
「そうか・・・ まあ、わしは死んだからな・・・ ナオミちゃんも未亡人になった訳だし・・・ 仕方がないといえば仕方のないことだ・・・」
『じいちゃんドンマイ』
〈おまえは黙っとれ!〉
『でもさ、じいちゃんは覗き放題の幽霊なんだろ 知らなかったのかよ』
〈こっちに来たのは、おまえが高校三年にあがった辺りからだ〉
「ノブヒロさん、ごめんなさいね」
「いいんだ、気にするな わしと違ってナオミちゃんは現役の女だからな」
「あのセーラー服と人外ディルドは息子さんと使わせていただきましたよ」
〈ぐぬぬ・・・〉
『じいちゃんドンマイ』
〈もう寝ろ!〉
『うん、体はベッドに戻しといて』
〈わかっとる、さっさと寝ろ〉
そういえば初めて枕元に立ったじいちゃんは心残りが何とかって言ってたけど
ばあちゃんの事だったのかな
初めてじいちゃんと母さんがセックスしてから一年近く経った
じいちゃんと母さんのセックスは続いているけどセックス中の母さんの反応は相変わらずだ
ばあちゃんの部屋通いも相変わらずで添い寝してお話ししてるだけ そのとき俺は気を使って先に寝てる
そして俺は付き合っていた彼女と別れた、じいちゃんからの告発で俺以外にも付き合ってる男がいたことが分かり
じいちゃんに貸した俺の体がラブホテルから出てきた彼女と男の前で堂々と別れを宣言すると
後は知った事かと言わんばかりにその場から立ち去った 無茶苦茶するじいちゃんだ
このまま今の生活が続くのかなと思っていた時だった
ばあちゃんが体の具合が悪いと言って病院に行った その日は帰ってきたけど入院することになり
1ヵ月後、うちに戻ってくることなく亡くなってしまった
みんな悲しんでいたけど親父は誰よりも泣いていて、普段は態度に出さなかったけど母親であるばあちゃんの事が好きだったんだなと感じた
じいちゃんはといえば、ばあちゃんが入院した時から声を聞いていない 四十九日の法要が終わってもじいちゃんは帰ってこなかった
そんな中で親父は1年間の単身赴任が決まり母さんと二人だけの生活になる
※元投稿はこちら >>