「私と一緒に魔蛇と戦う人がいることは前に言ったよね」
「ええ。かほさんが変身するイドゥンの番いの戦士で始まりの男の仮面の戦士の力を宿した人ってところまで」
「そう。その人は野島裕也って言って今まで黙ってたけど、私の幼馴染よ」
「野島裕也?え、もしかして年齢は私と同じ年で字は野山の野、島はただの島、裕は裕、也はなりって読みます?」
「あら知ってた?」
「知ってるも何も私と護の同級生で2年生のときも同じクラスでよく遊んでますよ。まさか仮面の戦士になるなんて」
「はは、世間は狭いものね。裕也くんは赤ん坊の頃にこの村に来たこともあってその頃から私と顔馴染みよ。あの時は本当に可愛い子だったわ」
初めて聞くかほさんの幼馴染・裕也の存在。そんな話、今まで聞かなかったのに・・・
「いつかみんなにも話そうと思っていたけど、なんだかんだで6年前も経ってしまったわ」
かほさんの話しぶりからして俺達と会っていない裏では裕也さんとも交流を続けていて、それも俺達よりも長いもの。
そう思うと俺の胸はモヤモヤした。
「杏咲達と会うまで、裕也君とはたくさん遊んだわ。みんなと一緒にやった大体の事は裕也君ともやった事がある事よ」
俺達とやった思い出の遊びまで・・・
「でも唯一やってないこともあるわ。それが私と裕也くんの馴れ始めよ」
馴れ始め。俺が一番聞きたくないようで・・・聞きたい話がはじまった。
「? それってどんな?」
杏咲さんは少し間を置いた。
「この銭湯って苗字は違うけど母方のお祖父ちゃんが造ったものだってことは前に話したじゃない?おかげで今は違うけど私とお母さん、お祖母ちゃんは特別に無料(ただ)で入れた時期もあったわ」
この銭湯を狗道さんが造ったことは知っていたが、そんな話は初めて聞いた。
「それでね、私がここに定期的に通い始めたのは保育園児の頃でその時にはお祖母ちゃんとお母さん、まだ小さかった裕也君と一緒に入ったわ・・・」
かほさんは恥ずかしそうに告白した。声の感じからして当時の事を思い出しながら話しているのだろう。
同時に俺は驚きと衝撃を受けていた。かほさんと一緒にお風呂? そんな事、俺を含めた男友達も誰もやっていない。
何だよ・・・裕也って奴、かほさんにとってかなり特別な人だってことは確かなようだ。
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