謎の果実は赤と青のカラーリングで彩られ、逆さのU字の蔕のおかげで錠前の形に似ていた。
かほさんが果実をもぎ取ってしばらくすると、謎の巨大樹から無数の葉っぱが生えた枝や蔦が蛇のように伸びて、かほさんの腰に巻き付き始めた。次に巨大樹の枝と蔦がかほさんの腰に集まるように巻き付くと、金色に発光した。
枝と蔦は金属質の奇妙な形をしたベルトのバックルになっていた。縦の長方形の四角の左右に小さな縦の長方形の四角があり、右手側には平たく、鋭さがない小さな刃が黄色で彩られている。左手側には何もなかったが、しばらくすると仮面の戦士の左横顔の絵が描かれた。
その戦士は赤い仮面だった。その顔はかほさんの両親が身に纏ってきた仮面の戦士の顔に似ていた。
かほさんは直感した。これこそが自身が使役し、身に纏う仮面の戦士の顔であると。
自身の腰に現れたバックルにもかほさんは見覚えがあった。バックルの左右からは黄色のベルトが出現してそれが腰に巻き付いていた。
この特徴からかほさんはバックルの正体にも気づいた。それは母方の祖父、佐兵衛さんがかつて所属していた狗道家率いるカルト集団・黒の菩提樹とその傘下の企業が造った物と寸分違わず同じだった。
通称・果実の錠前で果実の鎧を呼び出す戦極の力のベルト。数百年前、仮面の戦士達が力の源を操るのに必要不可欠のアイテム。狗道家に伝わる話によればベルト自体は希少金属でできているとされ、現在、狗道家と傘下の企業はレアメタルで伝承のベルトを再現したとかほさんは狗道家から聞いていた。
しかし、かほさんの腰に現れたものは巨大樹の枝と蔦が巻き付いてできたもの。そこから推理して巨大樹は仮面の戦士と繋がる御神木でかほさんは直接、彼らからその力を授かったものとされた。
いろいろ考えている内にかほさんの右手にあった果実は姿を変えた。それはリンゴの錠前になった。リンゴの錠前の中央部には黒い太字でこう記載されていた。『L.S.- TABOO』。聖書の創世期に登場する禁断の果実を思わせる名前だった。
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