情事を済ませ、服を着た俺達は月明りが照らす田舎道を歩いていた。
眩い光を放つ満月は周囲にあるアスファルト道路、ガードレール、電柱、村を囲む巨大な山をも照らしていた。
草むらに隠れるスズムシの音色もまた良い雰囲気を作り出す演出になっていた。
俺はふと右にいるミカさんに話しかけた。
「やっぱり変わった・・・かな?」
昔のように黒髪を伸ばしたままにしたミカさんは俺のほうに横を向いた。
「え?」
そう言うと黒髪が一瞬、揺れた。
「10年前より、いやさっきよりずっと」
本気でそう思った。
月明りが照らす長い黒髪の彼女は10年前よりもお団子に結んでいた時よりも。
「キレイだ」
月明りに照らされた彼女は驚いた表情から満面の笑みを浮かべた。
俺も彼女もすでに二十歳を超えていたが、今のミカさんは少女から大人の女になる瞬間のように思えた。
そしてその一瞬、その瞬間が最高に美しかった。
「それはつまり10年前とさっきはブサイクだったってこと?」
彼女はいたずらっぽくそう言い返してきた。
「えっ!?ああ、いやッ・・・!決してそういう意味では・・・!」
今度は俺が戸惑ってしまった。
「それとも老けた?」
「いや、あのっ、違うぅッ!!」
「フフフ」
子供のような会話を、大人になった今だからこそできる話を俺とミカさんはいつまでも続けた。
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