紫織さんが顔を赤くして「キャッ!」という小さい悲鳴をあげた。
はっと我に返った俺は急いで部屋の陰に隠れた。
「す、すみません!」
「い、いえ・・・!こちらこそ・・・うちの両親からも智樹君がここに通っているって聞いたわ。なおさら気を付けるべきだったね」
「いや俺のほうこそ何も知らず、本当にすみません・・・」
「そんな・・・でも」
どちらに非があるなどどうでもよかった。俺と彼女は互いに謝り続けた。
「ど、どうしてそんな格好に?」
「この場所では紺野家の女は裸で禊をする決まりもあるの。だから・・・」
そんな大事な決まりがあるなら紫織さんの両親はどうして・・・? 俺はすぐにそれを責任転嫁しているだけだと思った。本当に情けない・・・・
「そうですか。それでもすみません。あと兄貴とは?」
「オヌマ退治と表向きの仕事に明け暮れているわ。でも良い人だってことは伝わってくるわ」
早くも紫織さんの心を掴み始めているのか、兄貴は・・・それを聞いた俺の心にドス黒いモノが宿りつつあった。
「来月には式もあげる予定よ。それに伴って勇樹さんとここで両家に伝わる儀式も行うつもりよ」
両家に伝わる儀式。それに合わせて紫織さんは禊をして・・・俺はさらに先を考えた。兄貴の目に紫織さんのすべてが・・・
一瞬、頭が真っ白になる。というのがこの瞬間なのだろう。
そう思った瞬間、俺は行動に移っていた。
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