紫織さんとの時間は大人になっても永遠と続いてほしいと俺は思い始めていた。この人だけは絶対に兄貴に譲らない。
俺はそんな思いを生まれて初めて兄貴に抱いた。そして俺は紫織さんにちゃんとした告白すらまだしていないことに気付いた。
それから何度か、告白の機会を待った。その機会の度に告白しようと思った。しかし、情けないことに延び延びなってしまった。彼女と顔を合わせて告白しようとするとついごまかしてしまうのだ。
いい加減、俺も覚悟を決めた。そうこうしているうちに紫織さんの卒業が近づいていた。高校の卒業式が終わったら告白しようと決心した。
事前に彼女に聞いてほしい話があると伝えてもいた。そして卒業式当日、俺は紫織さんと高校最後のデートをしようという約束をした。しかし、その約束は果たされることはなかった。
卒業式が終わると、俺は狗道家の屋敷に呼ばれた。それには紺野家である紫織さん、そして同じく卒業した兄貴・・・
屋敷には両親を含めた狗道家、紺野家の面々が揃っていた。何かの宴会でも始まるのか?と俺は呑気に考えていた。
だが次の兄貴の行動と発言に俺は我が目と耳を疑った。制服姿の紫織さんと兄貴の距離が近づき、兄貴が馴れ馴れしく彼女の肩に触れ、抱き寄せるように自身の身に引き寄せた。
そして両家の親族、俺に向かってこう宣言した。
「みなさん、俺達、結婚することになった」
それを聞いた俺は今まで兄貴に奪われてきたショック以上のショックを受けた。俺の思考と心はしばらく止まっていただろうが、俺にとっては一瞬でも永遠のように感じられた。
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