初めて紫織さんと会ったときは紺野家の人だと知らなかった。3度目となる兄貴の彼女略奪行為に泣いていた時だった。
紫織さんもまた俺が狗道家の次男である事は知らなかった。セミロングの黒髪に穏やかで美形な女性だったが、初めて会った時は「何があったかは知らないけれど男の子がそんな涙を見せるなんて私は嫌よ?」と強気に励ましてくれた。
その時の紫織さんは優し気な顔だったが、目は厳しく、そして強かった。そんな彼女と俺は何度か話をした。
最初は男女の関係ではなく、友人同士の関係だった。
一緒に登下校したり、お菓子を食べたり、たわいのない会話をしたりと何気ない日常が俺と彼女にとっての楽園だった。
そんな日常も親父たちが戦っているからあるものと思えばまた複雑になり、それなりに有名な紫織さんと距離が近い俺に友人達や先輩らが嫉妬の目を向けてくることもあった。しかし、そんな時間もまた俺と紫織さんの大切な時間だった。
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