俺達は普通に銭湯の中にいるだけだった。
「あれ?何も変わってない?」
「いいえ、玄関を開けてみて」
「今度は開けるんですか?」
さっきかけたばかりの玄関を鍵を再び・・・と思いきや、鍵がかかってない。
「あれ?どうして・・確かにちゃんと」
そう思うも俺は玄関を開けた。
銭湯の周囲はいつもと変わらない景色が視界に飛び込んでくるはずだった。しかし、どういうわけか、玄関の下にあるアスファルト道路は変わっていないが、向かいの家はおろか、隣の家などの建築物の類がなく、代わりに青々とした木々が生えている。
俺は左側を見た。そこには少し遠くにあるはずの狗道神社が振り向いただけで見える位置に移動していた。
「いったいこれは?」
「あれは狗道神社で狗道神社ではないもの、ここの銭湯もそうよ。私とあなたの集合的無意識が狗道家と夜戸家の力によって特殊能力のエネルギーが質量として物質化、実体化したもの。簡単に言えば頭の中のイメージを私達に宿る特殊能力で本物っぽく作った見て、聞いて、触れる現実に近い幻の世界よ。実体を持った疑似仮想現実とも言えるわね」
夜戸さんの言っている事に理解が追い付かないが、ロックシードを通じて俺と夜戸さんに宿る力によってこの空間が作られたということなのだろう。
「正直さっぱりですが、ここが現実っぽい空間って事だけは理解できます。こんな能力が俺に・・・とにかくこの空間で何を?」
「浄化の儀式よ。私とあなたが行う儀式でオヌマの穢れを清めたのち、私と一郎くんを通じて戦っている人達に付着したオヌマの穢れも清めるのよ」
オヌマの穢れを清める浄化の儀式。ついに俺もそれを行う日が来たのか。
そして俺はこの後に続く彼女の言葉に驚愕することになるとは俺は夢にも思っていなかった。
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