それから政治家たちの熱弁は続いた。
「巧妙?言葉巧み? 笑止千万! そんな言葉を使っていいのは超一流の詐欺師だけだ!!」
その言葉を合図に怒号が響いた。
「電話の声が息子に似ていた?泣き声が似ていた?ふざけるな!それは貴様らがクズだからそうなったんだ!」
それは詐欺などの犯罪で食い物にされた被害者を非難するどころか、拳でぶん殴り、無理やり言うことを聞かせる恐怖を与えるかのようだった。
「この際だから言ってやる!自分が国民だ?ふざけるな!国民なら自分の国の法律ぐらい知っておけってんだ!家畜のブタ以下のゴミなんだよ!ぬるま湯に浸ってぼーっとしている奴は!奴隷にならないと何もできない上に現実を見ないクズ!てめえの立場をわきまえろ!」
言葉遣いも乱暴になり、その言葉は一部の犯罪被害者達を凍り付かせ、ビクつかせた。中には自殺した人もいたかもしれない。
しかしそれすらも想定内であった。この国に必要なのは役に立つ者、使える者。逆に役に立たない者、使えない者はいらないのだ。
「使い物にならない奴隷の話はここまでにして使い物に奴隷の話をしよう。言っておくが、ありきたりな美辞麗句は抜きだ。言葉を飾らずに言おう。昨今、我々はオヌマという化け物と戦い、幸いにもそれと戦う力がある事を国民の皆が知ったのは記憶に新しいだろう」
電話の声だけを肉親と信じ、命と時間を削って得た大金を簡単に我が子だからという理由で渡す神経を持つ親、いい年をした大人なのに幼子のままという認識を持ち続けた親には到底理解できない演説が始まった。
「その力とは果実の鎧の戦士、黒影トルーパー。足軽のごとき姿はまさに国のために戦う者の姿そのものだ。もちろん、この足軽の鎧をつける者はただ働きではない。家族のため、自分のため、ひいては国の未来のために命を捧げる覚悟を持って大金を得たい者だけが身に着ける事を許されるのだ。いつまでも甘ったれた神経でいる奴が触れる事はおろか、視界に入れる事すらも許されない鎧でもあるのだ」
黒影トルーパーの志願兵とそれに伴う報酬。使える兵隊を得るために使えない国民とは名ばかりのクズを切り捨てる選択。
未来の命を守るという名目で非情にして無情、冷酷な日本が今ここに誕生した。
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