冷静に考えれば世界は一見、平和なようで知っているか知らないか、遅いか早いかの違いで残酷な仕組みが今でも続いている・・・と誰かが言っていた。
今でもオヌマの謎は解明できないが、ハルさんはあいつらが人間の煩悩、負の感情、マイナスエネルギーを餌にしている事に確信を持っていた。
オヌマが出現し、奴らとの戦いが始まって数十年。戦闘要員、一般人の死傷者0というのは嘘ではない。だが一般には知られていない事実があった。
最初のオヌマ達が現れた際に昏睡状態になった人間達がいたのだ。だが、そいつらはただの哀れな被害者ではなかった。
警察が念入りに調べた結果、そいつらは小規模な犯罪から企業に大損害を出すほど万引き犯、さらに特殊詐欺などを行っていた反社会勢力のメンバー達だった。もちろん、全員接点があるわけではない。
とくに万引き犯は万引きGメン、詐欺グループは出し子、受け子の役割を持つ人物を追っていた警官達が昏睡状態になった彼らを発見していた。
はじめはただの偶然と思われた。オヌマの出現が続く度に犯罪者、または犯罪を犯そうとしていた者が昏睡状態になるという現象が続いた。
そして確信に近づく瞬間もあった。セイヴァー、シルフィー、黒影トルーパー達がオヌマを倒すと昏睡状態になった犯罪者が目覚め、回復したのだ。
しかし、その時のハルさんはまだ半信半疑だった。だが、次のオヌマ襲撃で確証を得る決定的瞬間がついに来た。犯罪者に黒い血管のような物が現れ、それが黒い蔦になると全身に巻き付き、身体が消滅しそうになる現象が起きたのだ。幸いこれもオヌマを倒した事で事なきを得た。
これを知った狗道家、夜戸家、政府は悠長な事など言っていられないことを悟った。政府はこれまで甘すぎるとも言えた日本の法律を1日で変え、半ば強制的に国民にそれを強いた。当然、非難が相次いだ。しかし、政府はオヌマにも劣らない暴走寸前の正義の鬼、狂気の悪魔とも言える勢いで有無を言わさなかった。逆らった者、盾突く者は容赦なく非国民であるという戦時中の言葉を復活させた。国民はそれに震え上がった。
政府も正気の沙汰ではなく、もはや手段など選んでいる余裕はなかった。国民にオヌマが関与しているということを公表しなかったのは、この法案が互いを罵り合い、疑心暗鬼、誹謗中傷によってマイナスエネルギーが増加し、オヌマの更なる出現を防ぐ防波堤の役割もあったからだ。
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