3年前のあの光景は俺のトラウマになっていた。頭と心が停止、空白、グチャグチャになり、13年生きてきて初めて味わうあの気持ち、あの恐怖。
あの恐怖はどんなホラー映画にも負けないどころか、生命に危険が及ぶという事がない限り、あれ以上の恐怖は虚構の世界では得られないと思う。
そんなこんなで俺は高校1年の春を迎えた。場所は近くの高校で黒影トルーパーに変身する隊員を親に持つ子も多い。大小の白い雲がある晴れた青空、満開の桜が散り、それが生み出す桜吹雪。その年の入学式で狗道家の出身である俺は当然、注目された。
だがもうひとり、注目の的が現れた。生徒会の代表のひとりが新入生の俺達に挨拶と演説をはじめた。だがその内容が俺の頭に入ってくることはなかった。その人物、女子生徒は俺が知っている人だった。
この世界に仮面の戦士を生み出したはじまりの二人の親族、夜戸ハル。
17歳になる彼女の顔つき、身体はより女らしくなり、この高校の中で1番の美人と称されるなどアイドル的存在だった。
閉じた瞳と緩んだ口元が生み出す、あの日とあまり変わらない美しい笑顔。その笑顔は先輩たちをはじめ、新入生の心をどれだけ掴んだことか。
だが、俺はあの日の夜の事をはっきり覚えている。覚えているからこそ、その笑顔には恐怖しか感じなかった。
ふと彼女と目が合った。3年ぶりに目を合わせる俺と夜戸さん。瞬時にあの日の光景が脳裏によみがえる。親父に跨り、裸の彼女が前髪の中から見せたあの目・・・しかし、現在の彼女は新入生に見せるものと変わらない笑顔を俺に見せてきた。
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