以上に述べたロックシードの内、マツボックリ以外のものは量産を制限し、黒影トルーパーを率いる各部隊の隊長のみが使用することを許した。スイカアームズにいたっては自己修復能力もあり、ある程度の数だけ量産した。また長時間の運用には限度があり、それを過ぎるとエネルギーのチャージまで使用できないという制限も与えた。
それから数年が経ち、私や男、トルーパー部隊たちは場数を重ね、死にも狂いで戦い続けた。
幸いな事に今のところ、死傷者がいなかった。試行錯誤も重ね、スイカアームズの攻撃力だけでなく、隊員が使用するビークルの強化も加え、モンスター達を巻き添えに自爆する機能も与えた。危なくなれば爆弾を仕掛けて逃げる。それを絶対のルールとした。
さらにモンスターの研究も重ねた。私は超常の存在としての力を使い、モンスターが現れる世界の出どころを辿った。
何度かモンスターに遭遇すると、私と男は出入り口である骨のファスナーことゲートの向こう側に行くことに成功した。
以後、異形のファスナーの名は次元と時空の裂け目、亀裂の意を込めてクラックとする。
驚いたことに地球と何ら変わらない世界だった。だがそう思ったのは最初の内だけだった。そこには人間はおろか、動物もいなかった。変わりにあらゆる姿をした無数のモンスターが跋扈していた。
私と男は慎重にその世界を調査した。その世界の地球のビルや家に人々が生活していた痕跡がまったく見られなかったのだ。
まるで鏡の世界が反転せず、現実世界と何ら変わらない風景になった。そんな印象を私と男に与えた。
私と男はもとの世界に帰還すると、その世界の名前を考えた。偽のかくりよ、虚像の世界。結果としてどちらも採用された。
虚像のカクリヨ。それがあの世界の名称となった。カクリヨとは文字にすると幽世、隠世になり、いわゆるあの世、黄泉の国だ。
しかし、私と男にはあの世界が到底、あの世とは思えなかったのだ。よって鏡の虚像のごとき、偽のカクリヨ。
虚像のカクリヨについては数十年の調査が必要となるだろう。同時に私はずっと疑問に思っていた事を男に相談した。
私と男が今いるこの世界の少なすぎる人口についてだ。それに対し、男は苦い顔で辛い考察を私に話した。
あの白い空間でこの世界を何とか再構築したが、助けられた人間はごく一部のみで、あとは消滅してしまったのでは?・・・と。
そう言われてしまうと私は何も言えなかった。神と言っても過言ではない力を持つ私たち。その傲慢さがこうして返ってきたようにも感じられた。私も男も自身の力に自惚れていたという事実を否定できない。
あの時は無我夢中であった。再構築する前の世界のことなど何も把握していない。その世界に住んでいた人間のことさえも。
そんな事を考えていた私を察したのか、今は自分達にできることだけを考えようと男は言ってきた。
私は決意を改めてうなずいた。
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