神社の庭に落ちた私は立ち上がろうとした瞬間、男に声をかけられた。
「おい!大丈夫か!?」
短いボブカットで黒髪の青年だった。顔はそこそこイケメンで服装はどういうわけか巫女服で失礼だが、気色悪い。
しかし、次に発した言葉で私は驚愕した。
「君はシルフィーか?」
なぜその名を知っているのか? 彼とは初対面で名乗ってもいない。
「この姿では信じられないが、これを見ればどうだ?」
男はそういうと赤い錠前を取り出し、私に見せた。MESSIAHと記載されたザクロの錠前・・・
間違いない。私の愛する元人間にして超常の存在となった男だ。
男は私と再会するまでのいきさつを語り出した。
白い空間での戦いの後、男は神社で青年の姿になっていたそうだ。青年はそこそこ名のある神社の跡継ぎで世界を再構築した副産物か、男と青年は身体のみならず人格(魂)も融合してしまったそうだ。
初めは戸惑ったそうだが、いつか私と会える日を待っていたのだ。
「お前とまた会えた事は何よりも嬉しいが、今は片づけることがあるな」
男はバックルを取り出すと巫女服の腰に取り付けた。銀色のベルトが腰に巻き付く。もちろん、戦極ドライバーだが、私が使用する物とは少々異なる。左手側にロックシードを装填できる六角形の穴がもうひとつあった。
それは創世の力のパーツだった。さらにもうひとつ錠前を取り出す。それは血のような赤いオレンジの錠前だ。
『ザクロォ!』『ブラッドオレンジ!』 二つの合成音が響く。
二つの錠前をドライバーにセットする。
『『ロックオン!』』という声が重なる。男は小さい刀でザクロの錠前を斬った。それと連動してブラッドオレンジの錠前も展開し、ふたつの果実の断面が露わとなる。
赤と銀の装甲が男を包む。
『ブラッドザクロアームズ!狂い咲きサクリファイス!ブラッドオレンジアームズ!邪ノ道オンステージ!』
黒を基調に西洋の騎士のようなチェーンメイル型のアンダースーツ、前腕部と太ももには赤い模様がある銀色の装甲、ウサギ状に飾り切りしたリンゴのようなデザインの鎧は全体的に赤く、胸部と右肩にあるが、左肩のものだけ黒い蔦とブラッドオレンジを思わせるカラーリングで日本の鎧武者を形状になっている。
両肩の鎧の下には赤いボロ布があり、腰にもあるそれは赤いボロボロのマントになっている。
顔は前も後ろも赤く、口元には赤い包帯のような物が覆われ、目のバイザーも赤い。額は王様の王冠のような形状でこちらも赤い。
武装もブラッドオレンジの果肉を思わせる巨大な刀身を持つ刀である。名称はブラッド大橙丸。
しかし、これはこの戦士のメインの武器ではない。
救世主の名を持つ黒い魔弓。それこそがこの戦士の真のアイテム。名称はセイヴァーアロー。もともとは創世の力で男が自ら生み出した模造品だが、オリジナルである創世の赤い弓には決して負けない。
赤い肉と血液を思わせる色を持つ鮮血の赤き救世主、仮面の戦士セイヴァー。彼は再び私の前に現れた。
遠い昔、別次元の世界では偽りの救世主だったが、この世界では本物になれるか。
そんな不安はとりあえずとして、私は再び変身し、セイヴァーと共に向かった。
※元投稿はこちら >>