私は腰にベルト状のバックルを出現させた。縦に長い四角の左右に小さい四角があり、右手側には小さい刀が平らになる形で横に取り付けられているが、刃は肉を斬れるほど鋭利ではない。斬る物は別にあるのだ。
中央部には六角形の浅い穴があり、ある物を装填できるようになっている。
私はそのある物、錠前を右手に出現させる。ただの錠前ではない。
とある天才科学者が開発した異界の果実をベルトの特殊能力で形を変え、地球のあらゆる果実を模した錠前にするというシステムで私が自らの能力で生み出した特殊な果実だ。
ベルトの名は科学者の名前を取って戦極ドライバー。
錠前の名は鍵の種子からロックシード。
私が使用する異界の果実の名を持つ錠前は、ヘルヘイムロックシードだ。
ヘルヘイム。北欧神話の神ロキの娘のヘルが治める死者の世界だ。もちろん、このヘルヘイムという名も便宜上の名に過ぎないが、多少の違いはあれど異界の怪物達にぶつける力にこれほど皮肉で心強いものはない。
『ヘルズ!』
ロックシードを解錠したことで不気味な合成音が響く。
「変身!」
決意を胸に異界の果実の錠前をドライバーの中央に装填した。同時に法螺貝のような音色が鳴る。
しばらくして右側の小さい刀で錠前を斬る。私の上空にファスナーが出現し、それが開くと無数の緑の蔦が私を覆う。
私の目が桃とも紫ともつかぬ色に発光し、その光が全身に広がる。光と共に葉が散った。
銀を基調にした鎖帷子のようなアンダースーツ、左右の胸と両肩にウサギのように飾り切ったリンゴのような紫の鎧。
腰にはギザギザの金縁を持つ紫のマント、紫色の兜とベリーダンサーのようなベール、頭部と肩部には金色のイヤリングがある。
異界の果実の仮面の女戦士シルフィー。それが私の戦う姿だ。
※元投稿はこちら >>