ある世界で人類救済という名目で人体実験が行われていた。ある天才科学者が開発した技術の起動実験だった。その実験によって男は超常の存在へと変身した。私が愛することになる男はその科学者の前任者だった。私は別にその科学者を恨んでおらず、むしろ超常の存在にしてくれて感謝すらしている。
その世界は理由のない悪意、人類という種をさらなる進化へと導く試練とも言える脅威に狙われていた。その脅威もまた私達と同じ超常の存在で地球の伝承では蛇とも悪魔とも神とも言われた存在だった。その脅威には善悪はなく、超常の存在となった男を導いた事もあり、そう意味でも感謝している。
話を戻すが、超常の存在となった男は次元を超え、様々な仮面の戦士が戦う合戦の世界へと辿り着いた。男はそこで蛇と言われた名もなき超常の存在に今の自分自身の説明を受けた。蛇から仮面の戦士の力の一部と言うべきアイテムを与えられると自分になり考え、あろうことかテロ活動という形で人類救済を始めた。
しかし、天才科学者が男の起動実験のデータを礎に作り上げた仮面の戦士達、蛇が与えた試練で勝者となった戦士によって男の暴走は阻まれた。男は人類救済と言いながら、実際は死ぬに死ねない存在になった自身を救済してほしかったのだ。
男はどのみち、遅かれ早かれこうなっていた。勝者となった仮面の戦士もまた超常の存在で、さらなる未来ではそれを上回る時空と仮面の戦士の魔王と呼ばれる超常の存在が生まれていたのだから。
仮面の戦士としての男の超常の力はその魔王にも勝るとも劣らない力を持っていたが、暴走した男のメンタルではポテンシャルは活かしきれず、結局は負けた。男の魂は試練の勝者によって救済された。
そしてあるとき、時空を超えてやってきた魔王は男の魂の一部と超常の存在にやり直すチャンスを与えた。それはある程度の超常の力を持つ人間として転生し続けることだった。魔王は魔王どころか神そのものとしか言えない力も持っていた。
魔王がそんなチャンスを与えた理由は、ただ単純に「私に匹敵するかしないかの力を持っているのにつまらない奴で終わっていいのか?」というもので、どこか漫画的な理由に私は少し笑った。
もしかしたら別次元で超常の存在となった男と魔王が戦い、男があっけなく倒された世界線もあったのかもしれない。
ともあれ、私と男はどことも知れぬ世界で出会い、愛し合った。それは地球時間でどれくらい昔だったのかもわからない。
しかし、そんなことはどうでもよかった。男とともに、その家族や友人たちとともに泣き、笑い、怒り、悲しみ、喜ぶ。
それ以上の幸せはない。
私は何度でも会う。お互い顔や名前、魂の在り方が変わろうとも。
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