私と鮮血の救世主はどこまでも果てのない空間の底に落ちていった。
重力も何もない白い空間で魔蛇は自由に動き回っていた。
これは遠い未来において後から聞いた話だが、魔蛇は何とか試練の勝者達によって封印されたそうだ。
私と愛する男の姿が見えなくなるほど、試練の勝者達から離れてしばらく、すべての法則がねじ曲がった空間で短いようで長い、長いようで短い時間が経過した。
私と男を除いた16人の果実の戦士は、後に別次元から追ってきた果実の戦士達の協力もあって魔蛇の暴挙を何とか阻止した。
魔蛇は最後の最後まで暴れ続けた。その結果、試練の勝者達は自身の力の源に傷をつけてしまい、封印するのが精一杯だった。
力の源が直るまで果実の仮面の戦士は魔蛇を封印した世界に束の間の、仮初の平和を守る存在になる事を誓った。
一方で私達は底のない空間の最下層・・・ではなく、ほんの一部分にすぎないところまで落ちた。
そこには私達が先ほどいた景色とは違う『世界』の破片が散らばっていた。
おそらく魔蛇の暴虐によって破壊された世界のひとつだろう。私と男は心を痛めたが、そんな余裕を与えない存在が現れた。
背骨と肋骨、それにムカデを合わせたような巨大なファスナーが開く。魔蛇が使役していた怪物達が再び出現する。
西洋の竜のワイバーンのような姿をした漆黒のモンスターが私と男の周囲を旋回し、巨大な翼や尾を武器に攻撃を始めた。しかし、それだけではない。
様々な姿をした黒いモンスター達は私達に襲いかかるだけでなく、周囲に散らばる『世界』の破片を喰い始めた。
『世界』の破片を喰ったモンスターはその力を強化させた。私と男はすぐに察した。こいつらは『世界』の破片をすべて喰った後、魔蛇のもとへ向かう。
この時、私と男が決断した考えは正しかったと今でも思う。この決断がなければ試練の勝者達は魔蛇の封印に手こずり、さらなる被害の拡大はもちろん、封印すらできなかったに違いない。故に後悔はない。
私と男は力を合わせる。最初に述べた時の魔王から与えられたチャンスを今ここで活かす。
私と男の力。創造と破壊の力で破片になった『世界』の修復を行う!
私の本物の力と男の偽物の力。黄金の果実の力を今、この場に解き放つ。
私と男は互いに寄り添い合う。
私と男は眩しい黄金の光に包まれ、『世界』の破片が私達に集まる。黒いモンスター達はもがき苦しみ、周囲の景色が振動する。
次の瞬間、私と男がいたその「場所」のすべては幻のように『消えた』。
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