それから10年。文乃さんは今度、結婚することを母に聞いた。それを聞いた俺は今まで考えてこないようにしてきた事や、忘れようとすれするほど忘れられないあの夏の出来事で再び頭を抱えた。11歳の小学生から中学、高校、大学など俺はそれなりに楽しくやってきた。都会の友達ともバカ騒ぎをいっぱいした。ただ、本音を言えばそこには文乃さんもいてほしかった。
大人になっても田舎だろうと都会だろうと、文乃さんと一緒にもっともっと過ごしたかった。
俺は文乃さんに会う決意をした。あの日のことを謝り、ケジメをつけるために。そして、俺の想いを告白するために。
正しいとか間違いとか無駄とか無理とか関係ないし、どうだっていい。
今年で俺は21歳になるが、まだ誕生日は向かえていない。20歳になってものすごく心がざわつく。
そんなざわつきを抱えながら俺は眠りについた。
その夜、奇妙な夢を見た。
俺は11歳の子共の姿で田舎の夜道を走っていた。道からして和邇神社がある場所に向かっていた。
昔の記憶だろうか?でもこんな記憶があっただろうか?とにかく俺は神社へ続く石段を登った。
石段を登り終えると神社に向かったが、神社の横にある茂みから声がした。男と女の声だ。
そこには15歳の文乃さんと、仮面をつけた謎の男がいた。男の仮面は奇妙なデザインだった。
夜空には満月があったので仮面のデザインや色もよーく見れた。
天狗や狐のお面ならまだしも、男の仮面は西洋の騎士の兜を彷彿とさせ、全体的にサメを思わせる物だった。
3本ある目のスリットはサメの鰓に見立てられ、頬から耳にある突起は牙にもヒレにも見える。口の部分は凹凸の形で閉じられたクラッシャーで、額はサメの頭を模していた。額の先には宝石のような金色の菱形が配置されていた。
そして、頭頂部と後頭部の間にはサメの背びれがあった。さらに色はシルバーとシアンカラー(水色)だった。
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