扉が開き、少しふらつきながら部屋に入ってくる
目はもう虚ろで、それを見てようやく、俺は部屋のすみに寄せて並べたテーブルに腰を預けて立ったまま安心する
まるで小学校にあったような、分厚いだけのカーテンを通過した夕日のなか
古びたフローリングの床を部屋の真ん中まで歩くと、貴女はペタンと床に座り込む
力なく猫背になり、少しだけ宙を眺め、ゆっくりりょうてを床につき四つん這いになる
だらしなく、ロングの髪が床に擦れるほど首を垂らしたまま、歩いていたときよりふらつきながらゆっくり近づいてくる貴女を見下ろしながら、さっきまで感じていた不安や疑念が、ドロドロとした邪な感情で塗り潰されていくのを感じる
よくできたね
誉めながら、尻餅をついてだらんと座る犬の頭を撫でる
今日も誰にもばれなかったね
言う通りにしたら大丈夫だろ?
メス犬は発情してるから、躾ないと困るね
自分では、どうしたら良いか解らないもんな
全部教えてあげるからね
じゃぁ、今日もご褒美をあげるね
頭を撫で続けながら、言葉の一つ一つに従順に、頷いたり眉をしかめたり笑顔になったり、、、可愛い飼い犬の表情の変化を楽しむ
お腹が空いてるね
御飯だけじゃ足りないもんね
餌が欲しいね
泣きそうな、唇を尖らせた情けない顔
視線は俺の目と、「大好きな餌」と刷り込まれた場所を交互に見ている
餌が欲しいね
もらえないと困るね
じゃあ、何時ものように言おうか
ほら、カメラを見て
※元投稿はこちら >>