そんな時だった。
「一郎くーん、ここにいたんだ」
透き通るようなかわいい女性の声がした。
俺はその声がした方向に振り返った。
「久しぶり、一郎君」
そこには長い金髪をまっすぐ背中まで伸ばした碧い瞳のエルフのお姉さんがいた。といってもただのエルフではない。
頭には緑色の三角帽子、服装は高校のブレザーに緑色のマントのようなローブをつけているという出で立ちでエルフの魔法使いという称号を持つ。魔法使いとしての腕はまだ半人前だが、経験値次第で一流の天才魔術士も夢ではない期待されている。
彼女自身もそれに胡坐をかかず、自身の才能を伸ばすために日々の努力を怠らないなど性格も良い。
彼女の名前は神宮紗恵(じんぐうさえ)。その名の通り、顔は日本人寄りだが、この名前はあくまで地球上の戸籍の名称に過ぎず、彼女自身の本名は別にある。これは彼女達エルフだけでなく、地球上に住む異世界人すべてが戸籍上の名前を持っている。
それはさておき、俺は屋敷の書斎で見つけた裸の魔絵画の本を読んでいたところを紗恵さんに見つかってしまったのだ。
紗恵さんと初めて会ったのは彼女が中1の頃で今年で16歳になるが、不老長寿のエルフである彼女はちょっと会わないうちにどんどん大人の女性に成長していった。当然、小中高では年齢に反した美形の美人少女として男子からは大人気、女子から嫉妬の目を向けられていたとか。
そんな彼女は俺にとっても特別な存在だった。俺は狗道家の人間といっても一介の地球人で、彼女は将来有望のエルフで異世界人。人種も全く違い、とにかく高位の存在で文字通り、住んでいる世界も違ってどれだけ何をやっても辿り着けない存在だと信じて疑わなかった。
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