その夜、早織は通勤途中にLINEで予め夕飯の約束を取り付けておいた美佳との待ち合わせ場所に立っていた。
美佳もまた澤井と同様に大学から付き合いのある友人の1人だ。
金曜日の夜ということで街には人が溢れ、時折り自分より若い男の子(今年30歳を迎えた早織にとって男性と呼ぶには幼すぎる)から声をかけられて苦笑いをしながら掌を前に出して断るという状況に彼女は少し居心地の悪さを感じていた。
どうやら美佳は仕事が終わらず遅れているようだ。
20分ほど待っていると横断歩道の人混みを掻き分けるように小走りで渡ってくる美佳が見えた。
「はーっ!ごめん早織!すごい待ったでしょ?」
膝に手を付いて息を切らす彼女を見て早織は吹き出してしまう。
「大丈夫大丈夫!ちょっと休も?ね?」
美佳は早織の肩に手を乗せて寄りかかりうんうんと頷いてバッグから水の入ったペットボトルを取り出してゴクゴクと飲み干し「はーっ……」と大きくため息をついた。
早織はまるでオジサンみたいだなぁと思いながらも、美佳のこの飾らない性格は大学時代からずっと変わらないことに安心した。
「あ!そうだ、さっき誠ちゃんとサワイに会ったよ。」
「え?そうなの?今日飲みに行くって言ってたけど、この近くにいるんだね。」
「そっかぁ、いや、でも聞いてよ。サワイのやつ誠ちゃん連れてアダルトショップに入ろうとしてたんだよ!」
「えぇ……誠一嫌がってなかった……?」
アダルトショップというワードを聞いて早織は一瞬戸惑ったが、澤井の性格を考えれば悪ふざけで連れ込んだ可能性の方が高く、誠一もわかっていて断らない部分もあるので平静を保ち美佳に合わせることにした。
「まぁ、ほら、誠ちゃんもサワイの性格よく知ってるからいつもの悪ふざけに付き合ってあげたんじゃないかな?」
「うん、私もそう思う……。」
そう言って2人で苦笑いをしつつ繁華街へ歩みを進めた。
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