シンクの底にある最後のお皿を拾い上げ、泡を洗い流すと夕食の後片付けを終えた。夫はこのところの仕事の忙しさから早々にベッドへと入り、息子たちも自分の世界に戻るように自室へと消えていく。
母として子供たちは成長してしまうとつまらないものだと一抹の寂しさを覚え、着替えを用意して浴室へと向かった。
上半身から順番にボディーソープを塗りたくり、泡まみれになった身体を洗い流していく。学生時代は体育会系だったことが良かったのか、40代となった今でも贅肉は殆どない。さすがにいくらかの節制はしているが、胸だってこの年齢にしてはまだ重力に逆らう力を維持している。
白い泡の下から濃い小豆色をした大粒の乳首が現れ、明かりの下で凛とした姿を誇示している。
その遥か下では水流に揺らめく水草のように密度の濃い恥毛が束となって揺れている。
肌に化粧水で保水を済ませ、夫はさほど興味を示さなくなったシンプルなベビードールを身に着け、ショーツも合わせたものを身に着ける。妻と母という肩書きがついても女であることを忘れたくなくて、女らしさは内面からだという気持ちは常に持っている。
鏡の前に立ち、まじまじと自分の顔を見る。客観的に見ても同年代の女性と比べ、いくらか若く見えるだろうか。
あの彼に中で射精されてびっくりしたが、ほとんど予感していたように数日後、生理はきた。確実なことはいえないまでも、もう妊娠する確率は殆どないと言えるほど低いのだろう。
ある意味では淋しく、またある意味では有り難かった。もう立派な中年女のおばさん、それは自覚している。でも……という抗う気持ちも真由美のどこかにあり、まだ悪足掻きをやめたくない。
女に生まれたからには………。
翌日、真由美はグレーの上下、ワイドパンツのスーツに身を包み、黒いシャツブラウスをトップスに選んだ。インナーが黒のベビードールを着ていることもあるが、若い頃はよくこのスタイルが好きだったのだ。
いつものようにバスに乗り、揺られていると見境なく下半身をお尻に押し付けてくる痴漢が後を絶たない。こんな中年女の自分(真由美)にもだ。
そんな相手にも冷静に対象するのにも慣れてしまった。
それは電車内でも同じであり、むしろこちらのほうが多いかもしれない。触れているかいないか曖昧な痴漢からがっつり触ってくる痴漢まで、数えたらきりがない。中でもがっつり触ってくる痴漢は週に一度は遭遇し、こんなおばさんを触って何が良いのかとうんざりする。
そして、今日がその日になるなんて……。
来たっ!……と、思った。あっ……っと思ったときにはお尻に当てられた手が指を伸ばし、股の下へと移動させはじめていた。真由美は身を捩ってその手を躱し、手で振り払った。それでもこの手の痴漢はこの程度のことは慣れているのか、簡単に諦めることを知らない。
悪質なタイプは複数で行為を行う者も少なくはない。そう、真由美と身体半分をずらして向かい合う眼の前の男が共犯者らしく、下半身に手を伸ばしてきたのだ。真由美は当然その男の手を払い除けるが、今度は背後の男が両脇から手を差し込んできて、胸をがっつり掴んできた。
真由美の経験上、連携を見せるこの手のタイプは声をしっかり上げない限り止めはしない。そして真由美はそれができないタイプであり、痴漢たちもそれを見抜いて行為をエスカレートさせていく。
背後からはブラウスのボタンを上から順番に外されていき、ベビードールのブラ部分をずらしながら乳房を露出させられていた。こうなってしまえば下手に目立ちたくはない、そんな気持ちから耐えるしかないのだ。
こんな輩でも痴漢に何に重きをおいているのかはがわかる。乳首に触れる指先、摘み方、いわゆる愛撫の仕方で女を感じさせることに喜びを感じるタイプだった。
痛みを与えないよう乳首が刺激され、固くなるにつれ全身に鳥肌が広がっていく。その最中、眼の前で捏ねくり回される乳首を見ながら真由美の前に立つ男は、レディース用の細いベルトを外してパンツのファスナーを下げていく。
手の平を真由美のお腹に向けてショーツの中へと潜らせ、しばらくすると横に顔を背けた真由美の口から切れぎれの吐息が漏れ出した。
痴漢を始めたのは昨日今日のことではないことは明らかで、真由美は危機感を感じていた。適当に触らせていれば時間は流れ、いつもは開放されていたのだ。それが今日の痴漢は毛色が違い、本気で真由美を感じさせようとしているとしか思えなかった。
蕾を一際刺激していきそうになると指を膣に挿入し、巧みに動かして真由美の思考能力を奪っていく。手を持たれて導かれたペニスを握らされ、逃げられそうにはないと悟った。
パンツとショーツを下げられ、腰を落とした背後の男のペニスが股の下を潜って前側に亀頭が顔を出す。何度か前後に動かされてから、当然のように入ってきた。
2人の痴漢にサンドイッチ状態になった真由美が後ろから貫かれ、根元まで挿入されたペニスが奥まで到達した。静かに突いてくるスローピストンが頭の中を色情に染まらせ、真由美をただの女にさせていく。
どこかの駅に電車が停車して、乗客の入れ替わりがある最中も繋がり続け、電車が動き出せば男の腰も動き出す。真由美の正面に立つ男は盾となって人目を遮り、真由美の身体の支えとなる。
くいっ…くいっ…くいっ…くいっ…くいっ…くいっ……
短い巧みなピストンが真由美の奥を狙い撃ちにして、何ともいえない女の表情を作らせる。何かに酔うような、何かを堪えるような、電車内にいるにしてはそぐわない場違いな女の表情………。
恍惚としていたかと思えば表情を切なげに歪め、膣の中の杭が動かされるたび真由美は自らの指を噛んだ。静かに高まっていく身体が際限なく快感を受け止め、声を必死に殺さなければならないことに真由美は難儀する。
顎を上げ、右に左に傾けた顔の表情を歪め、男のピストンが尚も続けられていく。
にょりっ…にょりっ…にょりっ…にょりっ…にょりっ………
男により掛かる真由美の指がYシャツを掴み、思いを振り払うように頭を振る。不意に弾かれたように顎を上げて背中を反らせ、数回肩を震わせて静かになった。
何かを成し遂げたように放心した真由美の顔が、再び腰を動かしはじめた男によって妖艶な色に染まっていく。
未だ射精に至らない男のペニスが真由美の理性を眠らせ、人混みの中で静かに犯されていく。
真由美の熱く湿った吐息が、男のYシャツにまた吐きかけられる。
真由美の下車する駅はまだ、5つ先だった。
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