街路樹の芽吹いてきた若葉が、春の訪れを真由美に告げていた。早朝のジョギング時ははまだ寒さは否めないけれど、早春が香ってくるようで気分が上がる。
今日は何を着ていこうかとクローゼットの扉を開き、そういえばいつ腕を通そうかと機会を伺っていた、ワンピースに目が止まった。ハンガーに吊るされたそれを手に取り、鏡の前で身体にあてがう。よし、これに決めたと、ハンガーを抜き取った。
白を基調としたワンピースは細かな柄がポイントで、派手さはないシンプルさが気に入っている。
上半身はわりとタイトながら下半身側はフレアな感じと、膝下丈のちょうどいい長さもお気に入りだった。この上にジャケットを重ねて着れば大人コーディというものである。
自宅を出て肌に当たる朝の春風はまだ心地いいと感じる気温ではないが、お昼近くにもなれば春を実感する温もりになっているはずだ。
ジョギングの後に浴びたシャワーで新しく買い替えたシャンプーを洗い流し、その香りを風に乗せて艷やかな黒髪を揺らして歩を進めていく。
粉費のために柔軟剤を使っていたワンピースからも華やかなフローラルの香りが華を添え、嫌味なく女性としての真由美を柔らかく演出する魔法になる。
これだけで朝のラッシュアワーだって、我慢できるというものだった。それも満員電車に乗り込むまでの、幻想だったけれど………。
発射を告げるメロディーが流れ、ドアが閉まる。
電車が動き出して間もなくのことだった。
なんの迷いもなくワンピースの裾を無駄のない動きで持ち上げ、鮮やかに何者かの手が潜り込んできた。
あまりに手慣れているので常習犯らしく、一応の抵抗を真由美は試みたものの早くも諦めの境地に立たされた。
相手の手を掴もうとすれば素早く躱され、それを追えば巧みに逃げられる。そして敏感なところをすり〜っと撫でていく。そんな攻防が自らが身に着けるワンピースの下半身で繰り広げられ、相手の手がタッチ&ゴーを繰り返さされていく。
真由美も相当に頑張ったつもりだけれど、相手の粘りに疲れてきてしまった。そんな真由美の不意を見逃さないように、すりすりすり〜っと触れては指が離れ、また触れては離れる。
そんな相手の執拗な攻撃に、眠っていた何かが目覚めようとしていた。真由美の中でぽっ…っと炎が灯るのが分かり、不味いとの自覚を覚えながら抗う勢いが萎えていくことに踏ん張りが効かなくなっていく………。
狙う相手はすぐに決めていた。若い女性ではなくてもこれだけ上品で、これだけ上玉なら申し分はない。綺麗な黒髪からはいい香りをさせて、何やらそれだけではない芳香を身体から漂わせたているような気がまする。
着ているジャケットの上からもウエストの括れた凹みが分かり、そそらせたのだ。勘は衰えていないと、指先が教えてくれていた。
パンストを履く女性が多い中でセパレートタイプを身に着けているらしく、柔肌の部分に触れて久しぶりに小躍りをしたくなる気分だった。
お尻側を包む布も広くはなく、指から伝わる形からおしゃれに拘りを持つ人であることが分かる。
シンプルな手触りの中に、ある発見をしていた。
薄手の生地のショーツだから、剛毛らしいゴワつきが露骨に分かったのだ。ホームで爽やかな顔を見かけたときから狙いを定めていたが、顔に似合わずこんなに濃い陰毛を生やしているとは………。けしからん女だと下半身に血流が集まる感覚を禁じ得ず、少なからず興奮を覚えていた。
なにより不自然な膨らみを指の腹が感知して、まるで自分の勃起したペニスをパンツの上から触っているのに似ていると、そう思わずにはいられない硬さを感じたのだ。
以前に一度だけデカクリ持ちの女性に遭遇したことがあるが、こんな奇跡のような出会いがあるとは………。
すりすり〜っと撫でては女の抵抗を躱し続け、弱まったところで一気に攻勢を進めていった。思った通りに抗う気力はもう萎えてしまったらしく、下着の上から撫でられるがままになってしまっていた。
それにしても見事な突起が膨れ上がり、容易に摘めるサイズではないか。摘んでは擦りながら手前にすぅ〜っと離し、すりすりとのの字を描くように指の腹を密着させながら回していく。
すると太腿を閉じて膝を擦り合わせ、諦めが悪くこちらの手を挟んで防御を見せてくる。こちとら昨日今日はじめた痴漢ではなく、この程度で怯む素人ではない。
ならばと指をさらに下へと這わせ、上下に擦りながら不意をついて何度もデカクリに触れるまでである。思った通りスカートの上から手を重ねられて、なされるがままに耐えている。
指先に湿り気を覚えたころに、満を持して下着の中へ手を滑り込ませた。なんという剛毛なのだろうか…。その先のデカクリを摘んでくりくりとさせたら腰を落とし、頭を跳ね上げるほど感じたので慌てて攻撃を緩める。
もう一度その下に指を進め、派手に濡らしている泉の根源に指を挿入させていった。女性はすぐに背中をこちらに預け、指の動きに合わせて腰をうねうねと揺らしはじめた。
押し付けられたお尻にペニスが揉まれ、分筆液がじゅわ〜っとパンツに染み込んでいく。あんなに爽やかな顔をしていたのに、こちらはお好きだと分かって、やはり見かけによらずスケベな女性に好感を抱かずにはいられない。
2本の指がにょりっ……にょりっ……っと、出入りを繰り返す。指の腹が細かなザラつきを捉え、この辺りが弱いなら奥はもっと感じるはずだと、楽しくなる。
不意に次の停車駅を告げるアナウンスが流れ、電車が減速をはじめると女性が正気を取り戻したように、こちらの手を掴んで抜き去る抵抗を見せできた。
開いた扉から逃げられてしまい、忸怩たる気持ちを噛み締めながら途方に暮れるしかなかった。
真由美はトイレに駆け込むと個室の中で、溜息をつきながら処理にあたった。正直、すごく良かったのだ。けれど気遣いが足らないだけではなく少し強引過ぎて、朝なのに時間をかけ過ぎなのだ。
往々にして自分に自惚れた痴漢は宝の持ち腐れなことに気付かず、あの程度止まり。いつの日にか然るべき最悪の日を迎えることになり、自分の迂闊さにやっと気付くのだろう。
今日も外回りに奔走し、お昼は簡単に済まそうとサラリーマンのおじ様たちと肩を並べ、駅前にある立食い蕎麦を啜った真由美だった。
若い頃は1人で入れなかったこの手のお店も、近頃は女性でも抵抗なく入店のできる店構えになったものだと、嬉しくなる。メニューもバラエティーに富んだものが取り揃えられ、これも嬉しい。
女性の真由美でもぺろりと平らげ、お店を出出から額の汗をハンカチで押さえてふぅ〜っと息をつく。あたしはオヤジか……と、呟いて辺りを窺い見た。
腕時計で時間を確認すると、次に向かう場所は時間をずらすように言われていたことを、思いだして今度は溜息をついた。仕方なく目下の目的を果たすべく商業施設のトイレへと向かった。
正午を過ぎると気温も上がり、お蕎麦を食べたとあって汗を掻いてしまった。出先で汗臭い女だとのレッテルを貼られるわけにはいかず、トイレに向かった理由とは、インナーを脱ぎ捨てることだった。
個室の中でジャケットを脱ぎ、背中のファスナーを下ろすと片方ずつ腕を引き抜く。汗を吸ってしまったキャミソールを脱いで、バッグに放り込むと制汗スプレーを首から胸元、脇の下と背中まで吹きはかける。
インナーは肌寒さを防ぐのに役立つが、本来の目的は下着が透けることを防ぐために身に着けたのだ。まぁジャケットを着れば分からないし、そもそも細かな柄がデザインされている。間近でまじまじと凝視する人はおらず、問題はないはずだと真由美は高をくくってしまったのだ。
たぶん真由美の考えは、間違いではなかったのだろう。余計な行動を取らなければ………だ。
そして暇な空き時間ができてしまったことで、いらぬ行動をとることになる真由美に試練が訪れることになると、このときの本人は考えもしなかった。
まさか、あんなことになるなんて………。
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